王馬「大変だ!オレが行方不明になっちゃった!」
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43: ◆DGwFOSdNIfdy[saga]
2022/05/18(水) 22:28:21.63 ID:0GrabGtv0
─中庭─


王馬「見付からないね」

最原「そうだね」

気不味い空気の最中、僕は所在無く学ランのボタンを弄った。

王馬「超高校級の探偵に頼ってもダメだったかー」

最原「ごめん。言い訳でしかないけど、僕はまだ未熟だから…」

王馬「そう言って、見付けてほしくないものは見付けた癖にね」

王馬くんは確かに校舎6階の高さから転落した。痛がる素振りを見せないのは、元々痛い振りをしていただけでとっくに肉体的な苦しみからは解放されているから。血のひと筋も流さないのは、それが何色か彼自身も判りかねているから。

最原「どうするの?」

王馬「そんな事訊かないでよ」

最原「なら訊き方を変えようか。僕はどうすればいいの?」

王馬「明日になったらまた手伝って」

最原「それがいいと思う。もう結構な時間だし、そろそろ東条さんが夕ご飯の支度を終わらせて呼びに来るだろうから」

王馬「今日の夕ご飯はなんだろうなー、楽しみだね」

最原「王馬くんは何が食べたい?」

王馬「んー…何も要らない」

最原「じゃあ東条さんは来ないよ」

王馬「そうだよ」


そのまま解散して、僕は寮の自室に戻る─はずだった。そうならなかったのは、急に王馬くんが「いた」と呟いて走り去ったのを僕が追い駆けたせいだ。

少なくとも今日はもう付き合う義理なんて無いんだけど、最初からそんなものは不要だったのだ。

王馬くんの言葉の意味、彼がどこへ向かっているのか、なぜ僕が彼を追うのか、その先に何が待っているのか、全部全部知っている。この短い旅の終点が近い事だって、勿論。

最奥へ向かうに連れ血の臭いが強くなっていく。


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