4:名無しNIPPER
2020/04/07(火) 22:09:50.43 ID:73mvxtQeO
 「…」 
 「ちょっと!どこに行くんですか!?」 
  
  アオイを無視して、その場を去ろうとする義勇に立場を忘れて叫ぶ。それくらい、今日と言う日は邪魔されてはならないのだ。 
  
5:名無しNIPPER
2020/04/07(火) 22:10:18.54 ID:73mvxtQeO
 「…他に花はないか?」 
 「…は?」 
  
  ようやく返ってきたのは、意味のわからない問いだった。花?どうして花など気にするのだろう。 
6:名無しNIPPER
2020/04/07(火) 22:10:56.21 ID:73mvxtQeO
 「さっきから、水柱様が花を捨ててしまうんです!」 
 「な、何を考えているんですか!?今日の花はしのぶ様の…」 
 「あぁ、だからこそだ…」 
  
  花を捨てている。どうしてそんなことをするのだろう。今日この蝶屋敷にある花は、しのぶのための…しのぶの葬式のために贈られてきた花ばかりだ。 
7:名無しNIPPER
2020/04/07(火) 22:11:33.77 ID:73mvxtQeO
 「やめてください!どうしてそんなことするんですか!?」 
 「…本当にわからないのか?」 
 「はぁ!?」 
  
  呆れてものも言えないとばかりの目線で見つめてくる義勇。その自信はどこから来るのだろうか。 
8:名無しNIPPER
2020/04/07(火) 22:12:11.55 ID:73mvxtQeO
 「おい、冨岡ァ!こっちは片付いたぞォ!」 
 「半々羽織ぃ!こっちも終わった!」 
 「か、風柱様!?伊之助さん!?」 
  
  気づけば風柱である不死川実弥、カナヲと同期である嘴平伊之助も、どうやら義勇と同じくしのぶに手向けられた花束を捨てて回っていたようだ。 
9:名無しNIPPER
2020/04/07(火) 22:13:07.65 ID:73mvxtQeO
 「どうして…どうしてそんなことを…」 
 「あ?お前、花見てねぇのかよ?」 
 「え?」 
  
  伊之助に言われて、アオイは初めて捨てられてぐちゃぐちゃになった花に目を向ける。 
10:名無しNIPPER
2020/04/07(火) 22:13:41.68 ID:73mvxtQeO
 「あっ…」 
  
  捨てられていたのはどれもこれも、藤の花だった。 
11:名無しNIPPER
2020/04/07(火) 22:14:12.56 ID:73mvxtQeO
 「酷い…」 
 「藤の花はしのぶ様が好きだった花なのに…」 
 「屋敷にも植えていらしたのに…」 
  
  違う、違う、違う、違う、確かにしのぶ様は藤の花を屋敷に植えていた。そして、手に持っていることもよく見られた。けどもそれは好きだったからじゃない。全ては鬼を[ピーーー]ため。自分の身体を毒に変えるために、育てていただけなのだ。 
12:名無しNIPPER
2020/04/07(火) 22:14:42.91 ID:73mvxtQeO
 「なぁ、アオコ、お前ならわかるだろ?何も…向こうでまで、藤の花を見ることねぇじゃねぇか…」 
 「伊之助さん…」 
  
  死後の世界なんて信じていなかった伊之助が、こんな発言をするようになったのも、全てはしのぶ様との関わりからだ。 
13:名無しNIPPER
2020/04/07(火) 22:15:17.64 ID:73mvxtQeO
 「…あいつらは…せめて向こうでは幸せになってほしいよなァ…」 
  
  あいつ"ら"というのは、この屋敷の先代の主人のあの人のことだろうか。この人もまた、彼女に救われた一人なのだろう。 
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