228:名無しNIPPER[saga]
2020/05/10(日) 11:17:38.09 ID:7gnP6kF90
  
 おどけた声真似を披露しつつ、加蓮はゆっくりと歩調を緩めます。 
 夏の湿気にすっかり汗みずくとなったトレシャツのジッパーを下ろし、 
 ぱたぱたと仰いで、さして涼しくもない外気を取り込みます。 
  
 お外ではしたないのはダメです、と卯月にジッパーを上げ直され、 
 加蓮は情けない声で呻きました。 
  
  「うぇえー……谷間は私のアイデンティティなのに……」 
   
  「みくちゃんみたいですね」 
   
 温い風から逃れるように天を仰ぎます。 
 冬場に比べれば随分と濁っている夜空には、それでも、幾つもの星が微かに煌めいています。 
  
  
 空を見上げるのは久しぶりでした。 
 思えば、最近は前しか見ていなかったような気がします。 
  
  
 静かに夜空を見つめる背中を、卯月は微笑みながら見守っていました。 
  
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