アルコ&ピース酒井「Black Savanna」
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8: ◆z.6vDABEMI[saga]
2020/05/05(火) 19:53:54.22 ID:z3oD1mZbo
「てのがあって」
「怖。それよく何もなかったな」
と言うのを数日後、近況報告的に平子さんに言った。とはいえさすがに面白おかしく転がるような話でもないからきっと公共で喋ることはねえんだろうなと思った。オフレコってやつだ。
───ほんとの日常は、電波に乗せられる場所で言うはずがない。当然っちゃ当然だし、その位のバランス感覚がなきゃ生きてけない。
「や、ほんとそうなんすよ」
そして、ほんとにその通りだから、頷く他ない。
あの速度だ、ちょっとでもハンドルを誤って歩道に突っ込んでたら、まず間違いなく角度的にオレが最初にやられてる感じだった。しかもあの速度なら、恐らくは。
「……あれ当たってたら……体、ばらっばらになってたかもしんない」
「うわ……」
「だからなんなくてよかったねってことよ」
想像するだけで最悪だ、と自分でもちょっと嫌な気分になった。記事の見出しだって考えたくもない。
けど平子さんのあの表情から察するに、なんか一瞬で変なこと考えて勝手にテメェで気持ち悪くなったんだろうなと思った。妄想癖も大概にしねぇと、利点ばっかじゃねえんだな。
ここでこの話はおしまいだ。それ以上膨らませようがねえもん。だって。面白くねえし。
笑い話にできる技量がオレにあるんなら、もっと既にいろんなとこで使ってると思うし、もっと売れてるわ、と思わず自嘲する。それがいいって人もいるし、それがダメって人もいんのかもしんねえけど、今更だろ。
しかし何だったんだろ、あれは。違和感の正体が分かんなかった。思いがけず、ぽつりと言葉を漏らした。
「つか、その前になんか見たんすよね、オレ」
「なんかって何よ」
「なんなんすかね。人かな」
「人?なにそれ、どんな感じの?」
また見間違いなんじゃないの、位に流されるかと思ったけど、なんか妙に食いついてくんな。変に思ったけど、それを指摘するようなとこでもねえし、まぁ良いかと思って話を続けることにする。
「なんかガキでしたね。白い服着たガキでしたわ。車道挟んで向こうっかわで突っ立ってて。結構距離あったのに、何でか分かんねえけどガキだってのは分かったんすよ」
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