16: ◆ncieeeEKk6[sage saga]
2020/05/19(火) 17:54:32.93 ID:U1swVBcn0
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事務室の蛍光灯は窓側だけ点いていた。部屋中のどこを探してもバースデーパーティーの面影はない。光っている一部の蛍光灯がまるでスポットライトのように、ソファーに座っている誰かの後ろ姿を照らしている。
麗花だ。
照明をすべて点灯させると、来訪者の存在に気付いた彼女は振り返った。
「あ……!」
麗花は一拍だけ呆気にとられたような顔を見せたが、すぐに笑みへと表情を変えた。
「プロデューサーさん! お帰りなさい!」
「……ただいま、麗花」
「プレゼント、ありがとうございました!」
「ああ、誕生日おめでとう。……ごめんな、直接渡せなくて」
麗花の様子には特に変わったところがないように思える。心配しすぎただろうか。……いや、こんな時間まで帰らず劇場に残っているなんて普通じゃない。麗花の笑顔をよく見てみると、いつもの笑みと違って何かが混ざっているような気がした。喜びや楽しさとは違う何かが。
「プロデューサーさん、後ろを向いてくれませんか?」
「後ろ?」
その何かの正体がわからなくて言葉を続けられずにいると、麗花にそう言われた。逆らう理由もないので、言われるがままに振り向く。何かあるのかと思ったけれど、壁と棚、そしてドアが見えるいつもの光景だった。
「麗花、いったい──」
言い切る前に、背中に何かがぶつかってきた。振り向き直そうにも、体に手を回されて動くことができない。
麗花が抱きついてきたのだ。
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