8: ◆ncieeeEKk6[sage saga]
2020/05/19(火) 17:48:20.53 ID:U1swVBcn0
「暑い……」
今日の最高気温は28℃まで上がるらしい。もちろん真夏に比べれば低い気温だけれど、熱いお茶なんて飲んでいられない程度には暑い。そういえば、麗花と一緒にお茶を飲んでからずいぶん経っている。だからといってこの暑さを許せるわけではないけれど。
加えて、今いる劇場の事務室はエアコンが稼働していない。経費削減のため、エアコンの使用は6月まで固く禁止されているからだ。それまでは各々薄着になるなどの対策で暑さを耐えなければならない。もし掟を破ろうものなら、経費の鬼──秋月律子に雷を落とされてしまうのは疑いようもなかった。
「暑い……!」
「ふふっ。プロデューサーさん、今ので16回目ですよ」
窓もドアも全開にしている事務室にはもう1人、麗花がいる。仕事もレッスンもない彼女はこの暑い空間でずっと楽しそうに絵を描いていて、しかも他人が“暑い”と言った回数を覚えている余裕もあるらしい。薄手のポロシャツを着ているとはいえ、まったく汗をかいていないのは驚異的だ。
「でも、確かに今日は暑いですね」
「とてもそう思っているようには見えないな……」
「きっと、プロデューサーさんがいるからだと思います!」
なんと。どうやら自分でも気付かない内に冷気を発していたらしい。けれどそれがなんだというのだろう。周りを涼しくできても自分が熱くなっていては無意味だ。古くなった扇風機じゃあるまいし。
試しに手を頬に当ててみるが、熱いものに熱いものが触れただけだった。
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