黒埼ちとせ「進化論」
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30:名無しNIPPER[saga]
2020/06/26(金) 17:51:45.31 ID:W5lmC8VA0
「……藍子ちゃん?」

 藍子ちゃんは視線を落とし、手元にある芝生を撫でた。

「人も街も、信じられない速さでどんどん変わっていく……。
 とっても忙しくて、幸せが見つかりにくい世界になっている気が、ある時したんです。
 それは、銅像一つに対しても、それだけ多くの人の想いが複雑に絡み合うんですから……仕方のない事なのかも知れません」


「……見つかりにくい、か」

 ちょっとだけ、考えさせられる言葉だった。
 それは、諦めることに慣れていた私を、遠回しに喚起しているみたい。


「でも、変わっていくことが、ダメっていうんじゃないんです。
 たとえば、うーん……お部屋のカーテンを変えただけで、何となく新鮮な気持ちになれることだって、一つの幸せでしょう?
 つまりその……」

 何かを確かめるように頷いて、彼女は手元にあるトイカメラをもう一度携えた。

「幸せって、もっと身近にあるものなんじゃないかなって、教えてあげたいんです。
 せっかく私、アイドルをしているから、誰にでも使えるこのカメラで、こんな所にもあるんだよって。
 私みたいなのんびり屋さんでも、目まぐるしく変わる世界で、ほら、見つけられたよって……ファンの人達に、届けたいんです」



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