75:名無しNIPPER[saga]
2020/06/26(金) 19:47:09.62 ID:W5lmC8VA0
 「…………」 
  
  藍子ちゃんは、何も言わなかった。 
  
  私の額にそっと手をやり、口をギュッとつぐんで、今にも泣き出しそうだった。 
76:名無しNIPPER[saga]
2020/06/26(金) 19:52:56.96 ID:W5lmC8VA0
  私は藍子ちゃんの方を見つめた。 
  これは、この子に返してあげるべき言葉だと思ったから。 
  
 「ちとせさん……?」 
  
77:名無しNIPPER[saga]
2020/06/26(金) 19:57:20.82 ID:W5lmC8VA0
  そう――。 
  覚悟はしていたつもりでも、やっぱり、残念だなぁ。 
  
  
 「ねぇ、魔法使いさん」 
78:名無しNIPPER[saga]
2020/06/26(金) 19:59:12.29 ID:W5lmC8VA0
 「ぷふっ。ククク……!」 
  
  藍子ちゃんの膝の上で、私の頭がヒクヒクと揺れる。 
  
  それに呼応するように、さっきまで大泣きしていた藍子ちゃんまでもが、今度は嬉し泣きに変わっていた。 
79:名無しNIPPER[saga]
2020/06/26(金) 20:03:18.65 ID:W5lmC8VA0
  一人の人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては偉大な飛躍が、かの星であった。 
  
  戦後、旅客機の登場により、誰もがみな空を旅することができる時代が到来して、幾年月が経ってからのこと。 
  
  人の夢はついに空を越え、月にだって届いたのだ。 
80:名無しNIPPER[saga]
2020/06/26(金) 20:06:44.73 ID:W5lmC8VA0
  魔法使いからの提案で、私と千夜ちゃんはユニットを組む事になった。 
  でも、本当はたぶん、千夜ちゃんの進言もあったんじゃないかって気はしている。 
  もちろん、私の方こそ大喜び。 
  
  おかげで毎日が、とっても楽しい。けれど――。 
81:名無しNIPPER[saga]
2020/06/26(金) 20:09:03.51 ID:W5lmC8VA0
 『ゴメーン☆ フレちゃんどうしても忘れんぼう屋さんでー♪』 
 『本当の忘れんぼう屋さんって、毎度毎度そう律儀に一週遅れの質問回答しないと思うけどね。 
  ま、もうすっかり恒例行事になってるおかげで、地味にこの番組の注目度も高まってるみたいやけど』 
 『かたじけない』 
 『微妙に間違ってないの腹立つ〜』 
82:名無しNIPPER[saga]
2020/06/26(金) 20:12:43.86 ID:W5lmC8VA0
 『しかしまぁ、この「夢色ジラフ」さんの質問も大概っちゃ大概だけどねー。 
  あれ? ジラフって、キリンだっけ? 日本語が得意なフレデリカさん』 
 『ンー、確かそうカモ?』 
 『先週までのトークの内容にしっかり触れてる当り、この人ひょっとしてヘビーリスナーさんかも知んないよ。 
  いつもウチのフレがお世話になってます〜』 
83:名無しNIPPER[saga]
2020/06/26(金) 20:17:29.71 ID:W5lmC8VA0
 『夢だっておんなじだよ、ってアタシは思います☆』 
  
 『……あー、なるほど。不覚にもちょっと納得させられたわ、あたし』 
 『でしょ?』 
 『レモンだけだとしんどいけど、あった方が栄養のバランス的にも良いみたいなことでしょ?』 
84:名無しNIPPER[saga]
2020/06/26(金) 20:20:16.96 ID:W5lmC8VA0
 「千夜ちゃん千夜ちゃん、朝だよー。起きて」 
  
  あくる日の朝。 
  私は千夜ちゃんの代わりに、カーテンをシャーッてした。 
  朝の陽光に照らされた、いつもと変わらない街並みが目に眩しい。 
85:名無しNIPPER[saga]
2020/06/26(金) 20:23:23.90 ID:W5lmC8VA0
 Mr.Childrenの『進化論』という曲を基に書きました。 
 途中、同曲の歌詞や、2015年のツアーで流れたナレーションを所々引用しています。 
  
 最後までお読みいただき、ありがとうございました。 
  
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