男「大将! 油マシマシのアチアチラーメン一丁」
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17:名無しNIPPER[saga]
2020/07/05(日) 09:07:46.34 ID:sGoLw9kr0
  
  箸を振り上げた大タヌキに、ナナフシが組み付く。いくらやせ細ったといっても、大タヌキとナナフシでは決着は明らかだ。だが、ナナフシはその細い身体のどこに宿したものか、あらんかぎりの力で大タヌキの食事を阻止している。争う二人を前に、店主の思考はゆっくりと回り始めていた。 
  
  大タヌキは言う「命をかけてラーメンを食う」と。対してナナフシは「命をかけて救う」と宣う。二人の人間が、それぞれの心情を前に命をかけてみせた。店主は、どちらに味方するでもなく二人の争いをただ見守ることしかできていなかった。二人のあまりの気迫に、自らがどこか場違いな人間であるかのように感じてしまっていたのだ。いや、大タヌキの目の前に置かれたラーメンは、それこそ店主がこの三か月の間、命を削って作り上げた新作なのである。ならば、この二人の物語に割って入る権利が俺にもあるはずだ。店主は、そう思いなおしこそすれ動けずにいた。 
  
18:名無しNIPPER[saga]
2020/07/05(日) 09:08:13.39 ID:sGoLw9kr0
  
  店主のハートがふと燃え上がった。 
  
  「何人たりとも俺の店で好き勝手にされてたまるか。何が『命をかけてラーメンを食う』だ。俺の作った味には、如何なる者も手を加えちゃいけねえんだ。客の命なんてもん絶対にかけさせねえ。かけていいのは俺の命だけだ。それに、何が『私が代わりに食べてやる』だ。こいつは、朝九時一杯目のラーメンなんだ。食していいのは俺だけだ!」 
  
19:名無しNIPPER[saga]
2020/07/05(日) 09:08:40.38 ID:sGoLw9kr0
 ?? 
  
  とある昼下がり、店に暖簾は掲げられていない。カウンターには、三人の男。店主に、ナナフシ。そして、いまや大タヌキの名を返上した『細タヌキ』だ。 
  
  「どうだい。来々軒新作の『あっさりラーメン』は」 
20:名無しNIPPER[saga]
2020/07/05(日) 09:09:07.74 ID:sGoLw9kr0
  
  「だめですよ、もう少しの辛抱なんですから我慢してください。それに、店長は病み上がりの貴方に負担をかけないためにわざわざこの新作を作ってくれたんですよ。感謝こそすれ、文句を垂れるとは何様ですか」 
  
  ナナフシに諭され、細タヌキは拗ねた子供のようにそっぽを向く。 
  
21:名無しNIPPER[saga]
2020/07/05(日) 09:09:34.48 ID:sGoLw9kr0
  
  「まあ、命をかけられるよりはマシってもんさ」 
22:名無しNIPPER[saga]
2020/07/05(日) 09:10:00.96 ID:sGoLw9kr0
  
 卍卍卍卍卍卍卍卍 
  
     おわり 
  
23:名無しNIPPER[sage]
2020/07/05(日) 19:14:00.65 ID:P6zeRPLQO
 読みやすいし面白かった、乙 
24:名無しNIPPER[sage]
2020/07/07(火) 01:52:14.70 ID:CUY1jcYc0
 良いねぇ!! 
25:名無しNIPPER
2020/07/07(火) 11:10:05.70 ID:MpsHL5OU0
 腹が減ったぜ…… 
26:名無しNIPPER[sage]
2020/07/10(金) 05:41:51.67 ID:PilxKjpq0
 やるじゃん 
27:名無しNIPPER[sage]
2020/07/12(日) 02:05:55.67 ID:V3f7pyAw0
 美味そう 
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