12: ◆kratnb/iBE[saga]
2020/07/16(木) 05:26:04.00 ID:jAnjOht50
  
 カーミラ「ま、いいわ。良いかしら、マスター。別に貴方がどこで死のうと勝手にすれば良いし、その時はいつか来るかもしれない」 
  
 カーミラ「でも今日貴方が私を庇って死んで、それは果たして褒められる事かしら? 誰かに「やりきった」って思ってもらえる?」 
  
 ぐだ男「……思ってもらえない、と思います」 
  
 カーミラ「そうでしょうね。だって本当に無駄死にですもの。だからマスター、例え貴方自身が納得のできない事でも、それがどんなに貴方の心を傷つける事でも、何を犠牲にしてでも生きて生き延びて、最期に胸を張って死ねるようにしなさい」 
  
 ぐだ男「胸を張って……」 
  
 カーミラ「自己満足で終えたいのならいくらでも誰かを庇い続ければいいわ。でもそんな貴方は、本当に「尊敬できる先輩」?」 
  
 ぐだ男「……滅茶苦茶痛い事言いますね……」 
  
 カーミラ「当然でしょう。私を誰だと思っているのかしら」 
  
 ぐだ男「すいません。軽率なことは控えます……」 
  
 カーミラ「ええ、そうしてちょうだい」 
  
 ぐだ男「でも……ごめんなさい。多分俺……目の前で誰かが死にそうになってたら、また飛び出しちゃうと思います」 
  
 カーミラ「そうでしょうね」 
  
 ぐだ男「だから、もっともっと頑張ります。あの程度の攻撃くらい、ちゃんと避けれるようになります」 
  
 カーミラ「……マシュも苦労するわね」 
  
 笑顔でそう告げるマスターにため息を吐いた。 
 ただ、何故かはわからないけど、それで良いような気がした。 
 この男は哀れで愚か。それに自分で気づいているからたちが悪い。 
 それでもこの男は虫のように地べたを這いつくばりながら、ゆっくりと前に進むことを止めようとしない。 
  
 あ……。そうだ、思い出した。先ほどの光景だ。 
 あの時は何が起こったのか分からなかったが、そうだ。 
 ワイバーンの爪がマスターの肩を抉り、血が空を舞った。 
 常人ならそんな傷を受ければ、激痛で地をのたうち回るだろうに。 
 あの時のマスターは、私を見て笑っていた。 
 そうだ。マスターの顔についた血が、とても綺麗――― 
  
 ぐだ男「カーミラさん? どうかしましたか?」 
  
 カーミラ「あまり調子に乗らないことね」 
  
 ぐだ男「……は、はい……?」 
  
 ……危ないわね。もう生前のような事はしないでおくつもりだったのに。 
 つい気分が盛り上がりかけたわ。 
 フフフ……もう少しこの男で楽しめそうね……。 
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