高森藍子が一人前の水先案内人を目指すシリーズ【ARIA×モバマス】
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33: ◆jsQIWWnULI
2020/08/08(土) 19:38:27.41 ID:b+VIQ/E60
「にゅ」

「……あ」

アリア社長が示した方には、いつの間にか外の光が少し見える通路があった。

「こんな道、今まであったっけ……?」

私は呟く。こんな道があったら、気が付くはずだ。しかも、私だけじゃなくてあやめちゃんもいる。見落とすはずがない。

「今まではなかったかもしれないですけど、今はあるんです!帰りましょう!今すぐに!」

帰り道を発見したあやめちゃんは、アリア社長をしわくちゃに撫でまわしながらそう言った。私はあやめちゃんから解放されたアリア社長をミニゴンドラに乗せながら言った。

「ありがとうございます。アリア社長」

「ぶいちゃ」

「アリア社長も一緒に帰ります?」

私がそう言うと、アリア社長は、まるで「気にするなよ」とでも言いたげな表情で腕を振った。

「さあ、藍子殿!行きましょう!」

あやめちゃんは船の先にへばりつくように座りながら言う。

「うん」

私はアリア社長に背を向け、いつの間にかあった水路に向かってゴンドラを漕ぎだす。先ほどとは違う景色。確かにこの水路は、私たちが今まで迷っていた水路ではない。確かに別の水路だ。

外の光が強くなるにつれて、先ほどまではなかった現実感が徐々に自分の身体の中に戻ってくるような感覚。私はふと、後ろを振り向いた。

「あ」

私が振り向いた視線のその先には、先ほどまであった入植時代の建物に集まる何匹もの猫の群れ、そして、その中心にどっしりと腰を落ち着かせている巨大な黒い猫の姿があった。その景色はまるで、おとぎ話の中から出てきた魔法の世界のようで、私の瞳をひきつけてやまなかった。

「わわ!藍子殿!このままではぶつかります!」

あやめちゃんの叫び声に、私は我に返り、慌てて前を向く。

「はわわっ……!っとととと!」

何とか船体を立て直し、建物への激突を回避する。そして、もう一度振り返る。しかし、そこには先ほど見た光景はなかった。私たちを乗せたゴンドラは、見慣れた風景へと戻ってくる。

「……いや〜、一時はどうなることかと思っていましたが……戻ってこれて何よりです……ね、藍子殿!」

「……」

「藍子殿?」

「……あ、うん。そうだね」

私はあやめちゃんにそう返事をしながら、もう一度だけ振り返る。そこには、来た時と同じ、晴れているのに妙に暗い水路があった。

「……猫の王国」

「え?」

「……ううん。何でもない。それより、午後からはあずきちゃん合流しなきゃだね。このまま行っちゃおうか?」

「そうですね。裏水路に行かないように、しっかりとしたルートで行きましょう!」

「うん」

「では、出発〜!」

空にはさんさんと太陽が輝いている。


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