15: ◆yufVJNsZ3s
2020/08/14(金) 08:32:01.40 ID:QdYqO6ws0
「……」
漣は口を開かなかった。しかしその表情は冷静そのもので、廃れた故郷への悲しみや深海棲艦への怒りがあるようにも見えない。
ただ、俺のシャツの裾を掴んできたので、知らないふりをする。
「あの辺に」
崖の上からゆっくりと街並みを――街並みの幻影を――指さして、
「わたしの家がありました」
「そうか」
わたしの家。そう、「漣」の家でなく。
「ひいおじいちゃんのころに引っ越してきたみたいです。疎開先がここで、戦争が終わっても忘れらんなくて、戻ってきたって聞きました。
おばあちゃんとお父さんとお母さんがいて、きょうだいはいなかったけど、歳の近い従姉妹がいたから寂しくはありませんでした」
漣の指が空気をなぞる。つつつ、右に動いて、下へ。
25Res/15.79 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20