空銀子「竜王の側室にでもなるつもり?」夜叉神天衣「否定はしないわ」
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5:名無しNIPPER[sage saga]
2020/08/14(金) 20:32:26.64 ID:H0ikd4c1O
「でも、それはあくまでも憧れでして……」
「憧れって意味なら、私も入門したその日から師匠に恋をしていると言えなくもないわ」
「あのジジイ。逆破門してやる!」

私と同じく憤慨した様子の八一を眺めて溜飲を下げて、閑話休題。本題へと移ろう。

「で? 何でそんなことが気になるのよ?」
「たとえばですよ? 師匠が俺たちを弟子に取った時にまだ16歳の青年だったとして、もしもそんな若い師匠だったら、姉弟子は憧れと恋の区別がつきますか?」
「もちろん、つくわ」

きっぱりと断言する。それは別物であると。

「師匠のことは尊敬しているし、桂香さんも含めて家族として愛しているけど、それと八一に抱く感情はまったくの別物よ」
「姉弟子……」
「初めは都合の良い駒に過ぎなかったケド」
「おい」

だって本当のことだもん。無論、今は違う。

「でもね、取るに足らない持ち駒に過ぎなかった弟弟子が勝手に駒台を離れて前へ前へと進んで、私を置いて、ひとりで"竜"に成って……」

気づけば私は置き去りで。初めてわかった。

「だから、失いたくないって思ったのよ」
「……同歩」
「は?」

いきなり将棋用語を呟かれて首を傾げると。

「俺も、銀子ちゃんが女流棋士として成功している姿を見て、置いていかれたくないって、失いたくないって必死だったんだよ」
「八一……」

なんだろう。お互い素直になれて、嬉しい。


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