高垣楓「あなたがいない」
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13: ◆eBIiXi2191ZO[sage saga]
2020/09/13(日) 22:56:01.74 ID:kh3F9e+N0

 ちひろさんが帰ってきたのは、もう夕方になろうとする頃だった。
 私の顔を見て一言「ごめんなさい」と呟き、力なく社長室へと向かう。
 彼女がなにを話すのかなんて、私には分からないこと。
 だがちひろさんのまぶたはややはれぼったくて、相当に泣きはらしたのだろうということは容易に想像できた。
 そして、社長室から戻ったちひろさんが、よろよろと席に着いた。私は少しぬるくなったお茶を、彼女へと差し出す。

「お疲れさまでした」
「いえ……楓さんにはご迷惑をおかけしました。本当にごめんなさい」
「……いえ、そんなこと」

 彼女の口からは、謝罪の言葉しか出てこない。ちひろさんの心を考えると、私はどう言葉を返したらいいのか分からなかった。

「Pさんのお姉さんに、お会いしました」

 ちひろさんはそう切り出す。




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