高垣楓「あなたがいない」
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182: ◆eBIiXi2191ZO[sage saga]
2020/09/24(木) 21:43:21.78 ID:itU6iUE10

 それから。
 私の薬の管理は、ちひろさんがすることになった。当然だ、前科があるのだから。

「はい、楓さん。薬です」
「ありがとうございます」

 朝晩と、彼女から薬を手渡される。それが私たちの新しいルーティーン。
 ちひろさんには手間をかけさせてしまうけれど、彼女は「このほうが私は安心ですから」と言ってくれる。
 なにより私には誰かがいてくれる、そう思えることが私には重要だった。

 少しだけ地に足が着いた気分。それが支えとなり、仕事を順調に回すことができる。
 仕事が回せると、気持ちが多少コントロールできるようになってくる。好循環だった。

 もちろん、波はやってくる。
 未だに泣き叫びたくなる気持ちになるし、ふたりの私がいる感覚もあまり変わらない。
 つらい気持ちに苛まれることも、まだまだ多い。でも。
 あの時よりは、まし。




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