ロード・エルメロイU世の事件簿 case.封印種子テスカトリポカ
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名無しNIPPER
[saga]
2020/09/22(火) 20:35:18.59 ID:kGu0y7r00
どうやら彼には正解が分かったらしいが、自分にはさっぱりだ。そこに多少の悔しさを感じないでもないが、いまは手っ取り早く師匠に答えを求める。
「師匠、どういうことです?」
「出発前に説明した通り、この遺跡――というか、遺跡の調査計画は時計塔全体で公平に共有している。といっても、その"公平さ"とやらは各派閥が垣根を越えて全員で協力しよう、というものじゃない。それぞれが順番を決めて調査をしているわけだが」
「つっ、次の調査権はどこの学部が?」
息を吹き返したらしいゴルドルフが訪ねると、師匠はやれやれと首を振りながら答えた。
「創造科です。ロード・バリュエレータは権力や陰謀と金石の契りを交わしたような女傑だ。まず間違いなく、こちらの落ち度を突いてくる。我々が藪をつついて蛇をだしたせいで、魔術の鉱脈を潰したとね」
……なるほど。
つまり、これ以上の調査ができなくなった責任をエルメロイ派に押し付けるだろう、ということらしい。いや、ゴルドルフの怯えようからすると、おそらくムジーク家もその対象になるのだろう。魔術の大家ということは、それだけ潤沢な資金や希少な呪体などを貯め込んでいるということだ。切り分けるパイとしてはさぞ魅力的に映ることだろう。
前ロード・エルメロイが亡くなった際、他の学部がエルメロイ派の利権を徹底的に毟っていった様子は自分も聞かされている。それと同じことが起こるなら、エルメロイ派は今度こそ息の根をとめられてしまうに違いない。
結果として齎されるのは、師匠の言っていた魔術師としての"死"だ。後で聞いたところ、資金難というのは魔術の家系が絶える理由の中で最もありふれたものなのだという。
ゴルドルフも頭を抱えていた。撫でつけた金髪をぐしゃぐしゃとかき乱しながら呻く。
「よりにもよって民主主義派か……!」
「加えて言うなら、さらにその後に控えていた権利待ちの各学部も声を揃えるでしょうね。この場合、貴族主義派とて容赦はしてくれないでしょう」
「最悪だ……い、いや、それなら村人を一緒に脱出させればいい! 創造科に引き渡せば――」
「なるほど、確かにそれならダメージは最小限で済むでしょう。怪我人と大勢の村人を連れてジャングルを行軍しつつ、神霊の襲撃を耐えることができるのなら」
「……連れて行く村人を数名だけにするのは? 怪我人も……見捨てるほかないが」
「残った村人を囮にするということならば、納得が得られる可能性は低いですね。何しろミズ・ティガー……神霊との戦いに乱入した女性ですが、彼女は村が危険に曝されていると分かった途端、我々を置いて飛び出して行きましたから」
「下手に提案して信用を失う危険を犯すことも不味いか……いや八方塞ではないかね!?」
追いつめられた少年が絶叫する。正直、自分も同意見だった。前門の神霊、後門の時計塔。チェスでいうところのチェックメイトに陥った感覚。
だが師匠はゆったりとした動作で右手を掲げると、その人差し指を立てて見せた。注目を集めてから、告げる。
「我々に残された道がひとつだけあります――遺跡から何らかの成果を引き揚げ、継続して調査する権限を獲得すること。これ以外に生き残る術はありません」
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