28:名無しNIPPER
2020/11/08(日) 09:20:42.43 ID:FQVp12gN0
  
      * * * * * 
  
  
  夜、ライラのもとにプロデューサーから電話があった。 
29:名無しNIPPER
2020/11/08(日) 09:21:58.03 ID:FQVp12gN0
  
  X ステップ・アゲイン 
  
  
  物語が終わらなければ幸福なんだとしても、時計の針は進めるべきだと思うんだ。 
30:名無しNIPPER
2020/11/08(日) 09:23:06.91 ID:FQVp12gN0
  
    * * * * * 
  
  
 「……つまり、過程を見せるのはルール違反じゃないかと思った、ということかしら」 
31:名無しNIPPER
2020/11/08(日) 09:23:48.80 ID:FQVp12gN0
  
  
    * * * * * 
  
  
32:名無しNIPPER
2020/11/08(日) 09:25:05.84 ID:FQVp12gN0
  
  ライブはたおやかに、しかし確かな熱を帯びて始まった。 
  先日の千秋のライブとは対照的に、やや小さめのハコでのライブ。しかしここは音響的にも評判がよく、またオーディエンス全体を見渡しやすい造りであることも含め、千夏は気に入っていた。 
  相川千夏はここ一年ほど、己の更なる表現を求め、いろいろ新しいことに取り組んでいた。まだまだ試行錯誤だし日々勉強ばかりと彼女は語るが、その評価は少しずつ高まっている。 
  柔らかだけど、芯のある歌声。 
33:名無しNIPPER
2020/11/08(日) 09:25:40.31 ID:FQVp12gN0
   
 「少しだけ、お話をさせてください」 
  ライブ終盤、曲間に千夏が珍しく尺を取って語りを始めた。 
  最近の身の回りのこと、環境の変化、変わらずいてくれる人の存在。慕ってくれる後輩のこと。 
  手応えがあるのはやはり嬉しいという。ファンからのレスポンス、スタッフやバックバンドからの評価。巷での知名度。そして新たなお仕事の需要の声。それは絶えず新たな取り組みや挑戦をしているからこそ、尚更感じることであると。 
34:名無しNIPPER
2020/11/08(日) 09:26:14.66 ID:FQVp12gN0
  
 「すごかったな」 
 「本当ですねー」 
  夕方の駅前。ライブを終えて帰路につく二人。 
  千夏に声を掛けたかったものの、閉幕後の慌ただしさの中でうまく話すチャンスがなかった。また後日改めて気持ちをちゃんと返そう。いつもにも増して、たくさん頂いたから。そう思いながらライラは晶葉とともに歩いていた。今日の演目の感想を述べ合いつつ。 
35:名無しNIPPER
2020/11/08(日) 09:28:25.12 ID:FQVp12gN0
  
  Y イッツ・ソー・イージー 
  
  
  世界はいつだって美しくて雄大で、汚くて儚くて、そしてやっぱり素晴らしい。 
36:名無しNIPPER
2020/11/08(日) 09:29:11.65 ID:FQVp12gN0
  
 《そこまでにしなさい》 
  背後から見知った声が割り入ってきた。冷静に、しかし多分に怒気をはらんだ声。メイドだった。 
 《私や事務所のプロデューサー様を介さず、しかもこんな夜に。ライラ様ご本人に直接アプローチするとは随分と礼儀知らずになったものですね》 
 《それも必要なことでしたので》 
37:名無しNIPPER
2020/11/08(日) 09:29:50.98 ID:FQVp12gN0
  
    * * * * * 
  
 「アピール、でございますか」 
 「そう」 
38:名無しNIPPER
2020/11/08(日) 09:30:45.67 ID:FQVp12gN0
  
 「♪ ♪ ♪」 
 「はいっ、オッケーです。とても綺麗ですよ。今の感覚を大切にしてください!」 
 「はいです。ありがとうございますです」 
  ようやくライラに笑みがこぼれる。ライブ曲に集中的に取り組んでいるここ最近。ようやく光明が差したようだった。 
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