19:名無しNIPPER[saga]
2021/01/17(日) 21:26:53.78 ID:3fqL9RpU0
私の中で、急速に脳細胞が活性化して、思考が冴えわたる。
上層部の中で、私への不信感は募っているらしい。
ある程度実績を上げ始めた指揮官が急に昇格者への接触を理由に、指揮官の辞職を希望する。
そして、彼のいうことには、記憶を昇格者に抜き取られているとか。
正気を疑うのは、無理もない。だが、ここまで直接的な手を使うとは―――予想外だった。
さらに、カレニーナが私に告げるのはまずい。
カレニーナ「危険を冒してここまで、言ったんだ。指揮官もオレにも教えろよ。レイヴン隊になにが起きてんだ?」
指揮官「私が今回の任務で、指揮官をやめる。それだけだ」
カレニーナ「はぁ!?なんだよそれ、聞いてねえよ」
カレニーナ「オレが指揮官を守るんだ。オレの許可なく勝手なことをするなよ!じゃあ、どこの部隊に入るんだ?粛清部隊か?」
カレニーナは期待がこもった視線を私に向ける
指揮官「いや、私は軍部から足を洗う。つまり、エデンに戻ることになる」
カレニーナは身体をびくりと震わせた。
カレニーナ「……意味わかんねえ」
指揮官「---結婚するんだ」
カレニーナを中心に急激に高熱が噴き出す。触れている肌がちりつくような熱さ。
カレニーナ「ふざけんなっ!」
こうして、彼女から真っ向から、なにかを言われるのは、初めてだ。
大体、ビアンカや周りの人間が気をそらして、なだめるから。これがカレニーナのありのままの姿だ。
カレニーナ「オレたちを置いて、一人幸せになろうってか」
指揮官「そんなつもりはない。こうなっては、私以外の人間がより適正だということだ」
私は一歩下がると、カレニーナは一歩詰める。
カレニーナ「―――指揮官は、オレに色々教えてくれるって言ったよな。あれはウソか?」
指揮官「戦闘のことなら、カレニーナに教えられることはもうないよ」
カレニーナ「ちがう、オレが教えてほしいことは戦闘だけじゃない!」
カレニーナは私の手を、痛いほどに握った。
カレニーナ「指揮官!分かっているのに、適当なことを言うな!オレの気持ちだって分かってるんだろう!オレは指揮官に…!」
指揮官「カレニーナ、もう戻ろう。私は粛清対象だし、こうした行為は君の信用を失墜させるリスクがある」
カレニーナ「今更こんなリスクがなんだよ!オレは昔からそんなものを背負ってる!指揮官も、オレと同じものを背負ってるはずだ!地球を取り返すんだろ!?」
カレニーナの黄金色の瞳が、不安で揺れる。
カレニーナ「そのために―――オレはまだお前と歩き続けたい。お前とならできる気がするんだ」
私は、カレニーナの手から銀色の球体爆弾をつまみ上げてから、胸ポケットに入れた。
それは、今まで共に戦ってきたはずの人類からもらった、最期のプレゼント。
指揮官「カレニーナ、初めから私は君の横に立つ資格などなかったんだ」
運命の歯車は回りだした。もう止まることはできない。
私の指揮官としての役目は、もはや取り戻せない位置にあるのだ。
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