【ミリマス】松田亜利沙「同級生から、コクハクされちゃいました……」
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10:自縄自縛 9/9[sage saga]
2021/03/05(金) 18:07:45.63 ID:sro8Zma60
 店から出て、地下から地上への階段を上っている内に、青空が目に入った。まだ湿り気を含んだ風が吹いているが、もう誰も傘をさしていない。

「あ、あれ!」

 ビルの隙間から覗く空に、うっすらと虹がかかっている。足元には水たまりがあちこちに散らばっているが、数日続いていた曇天を思うと、なんだかそれだけでホッとすることができた。

「天気が良くなったせいか、人通りがまた増えたな……」
「そうですね……ひゃあ!!」

 左腕が強く引っ張られた。階段で躓いたらしい亜利沙が、ジャケットの袖を掴んでいる。

「ああっ、すす、すみません」
「大丈夫か? もしかして、足の調子、まだ悪いのか?」
「まっ、まだ完治はしてないですけど、平気です! 平気ですからっ」
「……それなら、ゆっくり歩こうか」

 亜利沙が階段を上り終えたのを確かめて、足を進める。黒に茶色に、時々パステルカラーまで混ざった人々の頭が、川のように目の前を流れている。傘を手に持っていない人も多かった。

 週末にオフがあることに喜んでいた反面、出かけるには不向きなタイミングだったかもしれない。そんなことを思いつつ彼が大通りに向かって歩いていると、左腕がまだ引っ張られていることに気が付いた。

「あの……人混みすごいから、はぐれちゃうカモって思ったんですけど……ごめんなさい、迷惑ですよね」

 遠慮がちに、亜利沙は眉根を寄せている。街中を歩くのに変装が必要な彼女からは、やはり目を離さない距離に置いておくのが得策でありそうだった。

「いいよ、そのままついておいで」

 人混みを突っ切ろうと彼は歩き出した。

 背中に隠れるようにしてついてくる亜利沙は、借りてきた猫のように縮こまっていた。


 終わり


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