2:名無しNIPPER[sage saga]
2021/04/03(土) 21:15:05.37 ID:4B3dgK4pO
「アスカ! 良かった……無事だったんだね」
初号機のエントリー・プラグ内からサルベージされたシンジは、あの時から変化がない。
そんなことは最初からわかっていたけど、だからこそ強く失望した。故に、殴りつけた。
私とシンジを隔てる分厚いガラスにヒビが入り、拳が痛かった。なにより胸が痛かった。
私だって再会の喜びを分かち合いたかった。
けれど、すぐ近くには加持リョウジを喪ったミサトが居て、父親を喪った鈴原サクラの姿もある。赤城リツコの観察するような視線も無視は出来ない。私は監視されているのだ。
そうした理由の他にも、まるで不慮の事故から奇跡的に生還した友人を見つけたような、完全に他人事のシンジの態度に泣けてくる。
言いたいことは山ほどあった。
本当は、ただいまと言いたかった。
アタシが死ぬわけないでしょとか、アタシに会えてそんなに嬉しいんだとか、言いたい。
けれどもう、そんな軽口は叩けないのだ。
ガラス越しのシンジの困惑した情けない表情を見るに、やはり何も自覚してはいなくて、誰も何があったのかを教えようとはしない。
「あれから14年経ったってことよ」
かろうじて、せめてそれだけを伝えると、赤城リツコの視線が刺さった。釘を刺された。
余計な情報を与えて、下手に責任を感じさせると、何をしでかすかわからない。だけど。
これじゃあ、あんまりじゃないの、ミサト。
こんな、何も知らない子供を閉じ込めて、アンタは何もするなと言って、どうするのよ。
そして私は一体どうしたいのか、自問した。
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