【ウマ娘】トレーナー「なんかループしてね?」【安価】
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461:いぬ ◆FaqptSLluw[sage saga]
2021/06/26(土) 20:42:46.70 ID:erES689l0

 寒天が、僅かに水気を含んだ芝を凍らせる日こそが、運命の分水嶺となる日だった。

 吐く息は白く舞い、踏み出す脚は冷気を纏って強張る。空気感は格別だが、ウマ娘にとってはあまり好んで出走したいと思えるような状態とは言えなかった。

 だが、そんな憂鬱さすら感じる競馬場の様子とは打って変わって、出走控室にて勝負服に袖を通したマヤノトップガンの様子は晴れ晴れとしたものだ。


「こうも寒いと元気が出ないんじゃないかって心配だったけど、ご無用って感じだな」
「だってぇ、トレーナーちゃんがあっためてくれたじゃない?」
「……温めたというか、カイロを渡しただけなんだけどな」
「トレーナーちゃんが自分の意思でカイロを渡してくれたことが、マヤ的には嬉しいポイント!」


 何時ぞや見せた太陽の花開くような笑みをトレーナーへと浮かべる。そんな彼女にトレーナーは苦笑を以て返した。

 京都ジュニアステークスは、簡単に突破できるような安易なレースではない。近日にあるG1レース【ホープフルステークス】に比べれば格が落ちはするが、それでも格式高い中央のレースの一つである。

 マヤノトップガンもそれは理解している。――が、彼女が落ち着いているのには訳があった。


「カイロ渡したくらいで大げさな……。まぁ、絶対勝てるとは思うけど、ここで手がかじかんだり足が強張ったりして調子が狂ったら困るからな」
「……」


――トレーナーの存在だ。

 トレーナーはマヤノトップガンに心配させまいと気丈にふるまっていたが、その態度がマヤノトップガンにとってはあまり良いものに映らなかった。

 担当ウマ娘として、トレーナーと共に歩んでいきたいという思いは人一倍持っているとマヤノトップガンは自称している。

 だからこそ――相談出来ないほどの何かを抱えているトレーナーのことが心配で。同時に、なぜ自分に何も話してくれないのか、と怒りと戸惑いを覚えるのだった。

 故にこそ、マヤノトップガンは決める。


「トレーナーちゃん、何度もトレーナーちゃんが言うんなら、マヤは何度でも答えるよ」


 上るべき山は高く、果てしないかもしれない。

 その高さに絶望して、足を止めてしまうかもしれない。

 それでも。


「絶対――絶対勝つよ。トレーナーちゃんにそんな悲しい表情、させないからね」


 案外自信家のように見えて、臆病な貴方へ。

 呟く言葉は、万雷のごとき拍手と声援に飲み込まれた――。


「トレーナーちゃんが思ってるよりマヤが強いってこと、証明してあげる!」

―――

 


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