【ウマ娘】トレーナー「なんかループしてね?」【安価】
1- 20
546:いぬ ◆FaqptSLluw[sage saga]
2021/06/30(水) 01:38:01.38 ID:N44xGpXe0
所要で更新できずすみません……! ゆっくりと更新していきます
―――

――扉を開け、と頭の中で誰かが囁く。


 この声にそのまま従うのは癪だが、しかし俺もトレーナー室に誰がいるのか気になる。

 予測は出来ているが――だが、見ないわけにもいかない。

 何が起こるかわからない。でも仮に何か起こったら、脳裏に響く声のせいにしてしまおう――。

 まるでリビングの扉を開くような軽さで、少し湿った手でドアノブをひねる。


「……マヤノ?」
「……ん……すぅ……」


 机に突っ伏して眠っているのは、担当ウマ娘――マヤノトップガンだった。エプロンを着ており、その下は制服だ。……あんな格好で眠ってしまっては、制服がしわになってしまう。

 直してあげなければ、と一瞬思う。でも、もう彼女のトレーナーをやめようとしている俺に、触れる権利などあるのだろうか? いや、きっとない。

 そもそもマヤノと話す権利すらなく、マヤノと同じ部屋にいることすら本来はあってはならないことだ。それが許されている理由は一つとしてなく、俺をこの部屋に留めている理由は"かつてのトレーナーだったから"という矜持だけだった。

 トレーナー室に答えがあるといっていた理事長の言葉は恐らく真実だ。正直、この展開は透けて見えていた。なぜなら、そもそもトレーナー室に入る関係者などマヤノ以外にいなかった。

 ……じゃあ、なんでマヤノと関わる権利などないと思っているのに、俺は彼女がいることが見え透いている部屋に入ったのだろうか。

 答えは簡単だ。事ここに至って俺は――マヤノが引き留めてくれるかもしれないと期待していたんだ。

 マヤノが俺を許してくれれば、きっと俺はまだトレーナーを続けざるを得なくなる。いやいやながら……いや、本当はそれこそが望んでいる展開だった。

 悪魔のような浅はかさだった。俺は他者肯定にしか存在できない、とても愚かな存在だったのだ。

 そうだ、俺はもうここにいてはいけない。俺の勝手な妄想の中で済ませるのは誰にも迷惑をかけないが、それを外に出したり、妄想の影響を他者に与えてしまうのは明確な干渉だ。

 踵を返して、扉へと手をかける。呼吸が早まり、足が鉛のように重い。自意識などこんなに弱くて、逃げることすらできないほどに脆弱だ。マヤノから――ウマ娘へ背を向けることが、本当に恐ろしい。

 ふと、そんな俺の袖が――掴まれた。


<<前のレス[*]次のレス[#]>>
1002Res/543.55 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 書[5] 板[3] 1-[1] l20




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice