【ウマ娘】トレーナー「なんかループしてね?」【安価】
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548:いぬ ◆FaqptSLluw[sage saga]
2021/06/30(水) 02:18:19.70 ID:N44xGpXe0
 君のせいじゃない。

 悪いのは、俺だ。本当はこんなところにいるべきではなくて、もっと早く立ち去るべきだったのに立ち去らなかった俺のせいなんだ。

 君がメイクデビューで一着を取れなかったのも、もっと高いところを目指せなかったのも、全部全部――俺のせいなんだ。

 本当はそんなことを言いたかった。でも、どうしても言葉が詰まって出てこない。まるで俺が、その発言を拒んでしまっているかのように。


「……じゃあ、なんでトレーナーちゃんはそんなこと言っちゃうの……? マヤ、トレーナーちゃんと一緒にたくさんレース走りたいよ……!」
「……俺が、俺が悪いんだ」
「……トレーナーちゃん」


 マヤノがそう言った。こちらへ近づいてくる。一歩下がる。一歩近づく――。

 繰り返しの後、背後にもう退路がないことに気が付いた。トレーナー室の壁の冷たさが、背中に染みる。

 マヤノがどんどんと近づいてきて、俺はその場から少しでも逃げ出したくてへたり落ちる。でも下がれなくて――俺はマヤノを見上げる形になった。

 何処までも透き通る黄金の瞳が、俺のことを見た。たったそれだけで、金縛りみたいに動けなくなる。


「トレーナーちゃん、なんで何も言ってくれないの……? 俺が悪いって――話してくれなきゃわかんないよ! なんでトレーナーちゃんがそんなに思い詰めてるのか、マヤにはわかんないよ……」
「……」
「……レースの前、ずっと不安そうだったのが理由? ずーっと、何かに怯えてた……。それが、トレーナーちゃんをこうしちゃった理由? マヤがどれだけ"勝つよ!"っていっても、それでも震えてたのが……トレーナーちゃんをこうしちゃったの……?」
「それは……」
「マヤはね、トレーナーちゃんがいつか話してくれるって思ってたんだ。なんでそんなに怖がってるのかって。……マヤが勝ち続ければ、もう負けないぞって証明できれば、いつか、いつか話してくれるって思ってた」


 ……無理だ。マヤノが勝ち続ければ勝ち続けるほど、俺はきっと言い出しにくくなる。マヤノの走りが鈍ってしまうと思い込んで、何も言えなくなってしまう。

 そもそも、話したところで嘘だと思われる。この世界の何処に「僕はループしていて、目標を達成できないと無限に繰り返してしまうんです」と言って信じる人間がいるんだろうか。

 SF世界の住民ではない。この世界の人たちは、地に足をつけて生きている。何を話しても無駄で、だからこそ俺は真の意味で孤独を感じていた。

 そして仮に話した結果それが信じられても、俺に対する当たり方が違ってくるかもしれないと思うと、なかなか言い出せなかった。――今なら認めてやってもいい。秋川理事長のいう事は悉く正解だったさ。


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