【シャニマス】芹沢あさひ(17)「わたしも、変われてるっすか?」
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51:名無しNIPPER
2021/07/26(月) 17:32:56.97 ID:hYzIfmgQ0
 冬優子ちゃんが扉を開けてくれて、促されて中に入った。細長い部屋。薄暗い空間に、青っぽい間接照明が店内をほの明るく照らしている。壁にお酒が並んでいて、どれも半分くらいしか量がないけど、どれもカラフルで化学の実験室みたいだった。
 いつも入るようなお店とは全然雰囲気が違って、息が詰まる。他にお客さんはいないみたいだった。

 店員さんに案内されるのを待っていると、冬優子ちゃんが「こっち」と勝手に歩いて行ったので、どうしようと店員さんの顔を見ると、特に気にする様子もなく「お疲れ様です」と言っていた。いらっしゃいませじゃないんだ。店員さんは1人しかいない。

以下略 AAS



52:名無しNIPPER
2021/07/26(月) 17:33:29.54 ID:hYzIfmgQ0
 丸椅子に座ると目の前のお酒がより光って見えて、下から照らされているビンはそれぞれがカラフルな照明みたいだった。冬優子ちゃんがわたしの顔を眺めている気がしたけど、それより物珍しい店内が気になったので、わたしもいろいろ眺めていた。

 カウンター席の端にメニューがあったので開いてみると、料理かと思うような値段が書いてあって、声が出た。すぐ閉じる。

「何」
以下略 AAS



53:名無しNIPPER
2021/07/26(月) 17:34:01.10 ID:hYzIfmgQ0
 いつのまにか、目の前にグラスが置かれていた。冬優子ちゃんの前にブルームーン、わたしの前にスプモーニ。さっき言ってたのを覚えた。

「じゃあ、カンパイ」

 冬優子ちゃんは三角に足が生えたみたいな不安定そうなグラスを指で摘んで、軽やかにわたしの方に傾けた。
以下略 AAS



54:名無しNIPPER
2021/07/26(月) 17:34:59.15 ID:hYzIfmgQ0
 冬優子ちゃんは空のグラスを傾けると、お店の人に同じものを注文していた。
 わたしのは普通のコップで来たからまだまだ残ってるけど、冬優子ちゃんのは猫の水飲みのような量しかきてない。あれいくらするんだろう。やっぱり3000円とかするのかな。

 静かな時間が流れる。少しソワソワしながらちびちびとスプモーニを飲んでいると、他のお客さんがやってきた。男女2人。
 冬優子ちゃんの方を見て指示を仰いだら、特に帽子を被るようには言ってこなくて、冬優子ちゃんもマスクは外したままだった。普段から来てるみたいだし、そういう場所なのかもしれない。
以下略 AAS



55:名無しNIPPER
2021/07/26(月) 17:35:42.75 ID:hYzIfmgQ0
 わたしも残り半分のスプモーニを一気に流し込んだ。苦い気がしてたけど、たくさん飲むとちょっとだけ甘みを感じた。でも苦い。
 お店の人は無言でグラスを片付けると、流れるような動作で新しいお酒を作り始める。

「あんたもなんかいる?」
「えっと……じゃあ」
以下略 AAS



56:名無しNIPPER
2021/07/26(月) 17:36:27.57 ID:hYzIfmgQ0
 スプモーニじゃないやつが目の前に置かれて、わたしが少し動揺していると、お店の人が「少し甘めのものにしました」と小声で囁いてくれた。グラスの中身は、照明が乱反射して水色で綺麗な光を放っている。
 嬉しい。次からマスターって呼ぼう。

 一口飲むと、爽やかなカルピスみたいな味がして、スプモーニより断然飲みやすかった。美味しい。

以下略 AAS



57:名無しNIPPER
2021/07/26(月) 17:37:41.22 ID:hYzIfmgQ0
「好きだった、て……」

 過去形だ。ということは、今はもう、

「言葉選んだんだから汲み取りなさいよ」
以下略 AAS



58:名無しNIPPER
2021/07/26(月) 17:38:14.08 ID:hYzIfmgQ0
 事情は大体わかった。

 冬優子ちゃんは最後に、愛依には話したからあんたにも、と思ったから話した、と言った。

「あんたももうガキじゃないしね」
以下略 AAS



59:名無しNIPPER
2021/07/26(月) 17:39:13.41 ID:hYzIfmgQ0
「冬優子ちゃんは、」

 わたしは反対側の手でグラスの水滴を撫でながら、聞こえるか聞こえないかくらいの声で話しかけた。

「冬優子ちゃんは、これからどうするか考えてるっすか?」
以下略 AAS



60:名無しNIPPER
2021/07/26(月) 17:39:53.55 ID:hYzIfmgQ0

 冬優子ちゃんがさくらんぼを摘んで、いる? とわたしの口元に運んできたので、わたしは指に触れないように赤い実をついばんだ。

「将来は、せめて生きていけるお金を稼ぎながら、私を肯定してあげたい」

以下略 AAS



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