【ウマ娘】トレーナー「なんかループしてね?」スペ「2スレ目です!」【安価】
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755: ◆FaqptSLluw[sage saga]
2021/08/25(水) 16:00:06.83 ID:+hM7VL0K0
スーパー・ショート・ショートですがお納めください。

―――

 開いた窓から湿気を含んだ重い風が吹き込んで、僅かにツインターボの毛先を揺らした。

 じとりと巻き付くような湿気、曇天ともくればそろそろ雨が降るのは目に見えていた。

 だから、気分が余計に暗くなったのかもしれない。思い出したのは――あの日、メイクデビューの日の出来事。


「……なんで、なんで誰も、トレーナーのこと、覚えてないんだよぉ……」


 シーツを握って、涙を湛え、ツインターボは小さくつぶやいた。

 レースが終わって気を失い――気付いた時には、トレーナーは記憶ごとこの世界か消えてしまっていた。

 誰に聞いても二言目には「そんな人いたか?」と返ってくる。

 ツインターボだけが、トレーナーという人物の存在を確信していて。だが、周囲の人々はその存在を懐疑的に見ていて……。そんな状況に置かれたツインターボは、もう心が疲れ切っていた。

 わがままを言っても笑って聞き入れてくれた。消えて初めて、いろんなことに気を遣ってくれていたことに気が付いた。……世界で一番の味方が、消えてしまったということに気付いてしまった。

 ……苦しかった。

 息がつまるような、閉塞を感じた。

 雨が降ってきて、それがベランダに小さく打ち付けて。

 その甲高い音だけが、今のツインターボの味方だった。

 誰もがツインターボを慰めに来た。ただ、その心を癒すものは、本質的に存在しない。

 どれだけ待っていても、どれだけ望んでいても、いない――。


「……だれか、だれか覚えてないのかなぁ……」


 うっすらと隈の残る瞳で、外を眺める。

 これが御伽噺ならば、いい子にして待っていれば空から降ってくるのかもしれないけれど……。

 負けてしまったツインターボは、もう夢を見てばかりではいられなくなっていた。

 現実はまだまだ子供であるツインターボに、敗北の二文字を突き付けてしまっていて。


「……く、う、ぁ……!」


 シーツを小さな手でぎゅっと握って、寄った皴に水滴が落ちていく。

 この世界は残酷で、救いなんてなかった。

 そう思わせるに十分な絶望を、ツインターボは既に抱えていた。

 ……だから、もう。


「君は幸せになるべきだ、ツインターボ」


 幸せになってほしい――。そう願った誰かの祈りは形となる。

 ……そのウマ娘によって、ツインターボがターフに舞い戻るのは、また別の話。


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