2: ◆iGEcIiQPPHZy[sage]
2021/08/15(日) 21:53:15.73 ID:UdHDSlcF0
  
 「スマイルンルン〜♪ らんらららーん〜♪ 笑顔に〜なって〜♪」 
  
 「―――」 
  
3: ◆iGEcIiQPPHZy[sage]
2021/08/15(日) 21:58:48.60 ID:UdHDSlcF0
 「「「先生、さようならー!」」」 
  
 「さようならー。また来週ね!」 
  
 生徒の見送りを終えた後、教室内の片づけを始める。 
4: ◆iGEcIiQPPHZy[sage]
2021/08/15(日) 22:00:26.01 ID:UdHDSlcF0
 確かに可奈ちゃんは確かにこの教室に通っていた。 
  
 彼女は本当に歌が好きな子だった。 
  
 大してうまくないけれど思いがこもった歌を本当に楽しそうに歌っていた。 
5: ◆iGEcIiQPPHZy[sage]
2021/08/15(日) 22:02:39.75 ID:UdHDSlcF0
 彼女には他にも才能があった。 
  
 明るく活発な性格はみんなに好かれていた。 
  
 運動能力も高いし、何らかのスポーツをやれば結果を残せたと思う。 
6: ◆iGEcIiQPPHZy[sage]
2021/08/15(日) 22:04:20.86 ID:UdHDSlcF0
 そして私は可奈ちゃんのデビューを知った後も一度たりとも彼女のステージを見に行ったことがない。 
  
 たまにそういう人もいるが音楽のプロの端くれとして見世物としての側面が強いアイドルなんて興味ないとか、そんな理由ではない。 
  
 むしろ笑顔を、涙を、たくさんの感動をくれる存在で大好きだ。 
7: ◆iGEcIiQPPHZy[sage]
2021/08/15(日) 22:06:31.13 ID:UdHDSlcF0
 「来てくれてありがとう」 
  
 「いえ、オーナーにはお世話になりましたから」 
  
 ある日、私はとあるライブハウスに来ていた。今でこそ合唱講師一本で楽器に触れることはなくなったけれど、学生時代友人たちとバンドを組んでおり、その際に何度も演奏させてもらった場所だ。 
8: ◆iGEcIiQPPHZy[sage]
2021/08/15(日) 22:08:31.53 ID:UdHDSlcF0
 「できれば君たちにも参加してほしかったんだけれどね」 
  
 「もう無理ですよ。ここしばらくはみんなで集まっても飲み会にしかなりませんし。私だって何年もギターに触ってすらいません」 
  
 今でも大切に取っておいているけれど合唱の教室を開くということ、そしてバンドの仲間以外と一緒にやる気持ちになれなかったこともあり、ずっと仕舞ったままになっている。更に私以外のメンバーは仕事が忙しく本日来ることすらできてない。 
9: ◆iGEcIiQPPHZy[sage]
2021/08/15(日) 22:12:45.76 ID:UdHDSlcF0
 「アイドル?」 
  
 ここでかつて演奏していた人の中には伝説級のアイドルになった人もいるけど、彼女たちが来たならもっと話題になってるから違うはず。誰だろう。 
  
 「演奏の方はまだまだまだ初心者だけどね、気持ちのこもった歌を歌うんだ。そういえば君は昔からアイドル好きだったよね。気に入ると思うよ。いやもしかしたら知っているかもね」 
10: ◆iGEcIiQPPHZy[sage]
2021/08/15(日) 22:16:01.00 ID:UdHDSlcF0
 『パンとフィルム』とても素敵な歌だった。未熟だけど一生懸命なのが伝わる演奏、そして想いがこもった歌声。 
  
 だけど 
  
 ―最後の言葉消えないままで― 
11: ◆iGEcIiQPPHZy[sage]
2021/08/15(日) 22:19:24.25 ID:UdHDSlcF0
 「オーナーさん! ありがとうございました」 
  
 「あっ!?」 
  
 ライブが終わってしばらく後、オーナーのもとへ来てしまった。もう私が会ってはいけないと思っていた子が。 
12: ◆iGEcIiQPPHZy[sage]
2021/08/15(日) 22:21:23.77 ID:UdHDSlcF0
 そんな中、一人の男性が近寄ってきて頭を下げた。 
  
 「今回もお世話になりました。可奈もお疲れ・・・?」 
  
 反応的に765プロの関係者、おそらくプロデューサーだろうか。彼もその場の空気の重さに気が付いたらしく言葉が途切れた。そう思ったとき、可奈ちゃんが彼の手を引いた。 
37Res/26.25 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 
書[5]
板[3] 1-[1] l20