21: ◆iGEcIiQPPHZy[sage]
2021/08/15(日) 22:57:24.93 ID:UdHDSlcF0
 「あっ」 
  
 そうだ。最近夢で何度も思い返す彼女の歌。 
  
 ―スマイルンルン〜♪ らんらららーん〜♪ 笑顔に〜なって〜♪― 
22: ◆iGEcIiQPPHZy[sage]
2021/08/15(日) 23:02:27.14 ID:UdHDSlcF0
 「みなさんアンコールありがとうございます!」 
  
 アンコールの声に応えて本日参加したメンバーが再度出てくる。 
  
 「アンコールの前に今日は私の公演ってことで少しだけ私の話をさせてください」 
23: ◆iGEcIiQPPHZy[sage]
2021/08/15(日) 23:04:56.24 ID:UdHDSlcF0
 「だからたくさん挫折したり回り道したこともあったんです」 
  
 けれども彼女の真剣な言葉に会場の空気も変わる。 
  
 「歌を教えてくれた人に向いてないって言われたり、オーディションで落ちたり、歌の練習や勉強をするなって言われたり」 
24: ◆iGEcIiQPPHZy[sage]
2021/08/15(日) 23:06:21.07 ID:UdHDSlcF0
 「にゃはは。あのときはいろいろあったよね」 
  
 「それにそのおかげで可奈さんは新しい歌い方を覚えることができたんですよね」 
  
 「え、ありさの知らない話なんですけど!? 聞かせてください!」 
25: ◆iGEcIiQPPHZy[sage]
2021/08/15(日) 23:09:23.95 ID:UdHDSlcF0
 「それに昔歌が向いてないって言われたことも」 
  
 そういってまた一瞬だけ彼女は私の方を見た、気がした。 
  
 「その時私は一度歌をやめちゃったけどそこで楽器に触れることができました。きっとそれがあったから≡君彩≡でバンドをやることにつながったんだなって。それに歌が大好きだってことも再確認することができました」 
26: ◆iGEcIiQPPHZy[sage]
2021/08/15(日) 23:11:24.54 ID:UdHDSlcF0
 「あの……私のライブ、どうでしたか?」 
  
 「素晴らしかったわ」 
  
 「とてもよかったよ」 
27: ◆iGEcIiQPPHZy[sage]
2021/08/15(日) 23:14:45.20 ID:UdHDSlcF0
 「どうだい。来てよかっただろう?」 
  
 「はい」 
  
 「それにしても忘れたって本当かい?」 
28: ◆iGEcIiQPPHZy[sage]
2021/08/15(日) 23:16:07.86 ID:UdHDSlcF0
 あれから私は生徒の保護者たちに可奈ちゃんが通っていたときのことを話した。 
  
 それで失望した親御さんは当然いて来なくなった生徒もいるけれど、それでもこの教室が好きだと言ってくれる子供たちが今でも通ってくれている。 
  
29: ◆iGEcIiQPPHZy[sage]
2021/08/15(日) 23:18:23.27 ID:UdHDSlcF0
 「今更かな」 
  
 本日はが休みのある日、可奈ちゃんのライブを聴いて懐かしくなってしまっていたギターを教室に持ち出していた。 
  
 「先生! こんにちは!」 
30: ◆iGEcIiQPPHZy[sage]
2021/08/15(日) 23:20:06.47 ID:UdHDSlcF0
 純粋に笑って大好きな音楽を楽しんでいたあの頃を思いだしながら弾く。 
  
 「わー。すごかった! ありがとう! 先生の演奏大好き!」 
  
 可奈ちゃんの言った通りだ。自分の音楽で喜んでくれる人がいることはとても嬉しい。 
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