キョン「まるで少女漫画の男の子みたいだな」佐々木「それはキミだろう?」
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1:名無しNIPPER[sage saga]
2021/10/02(土) 20:55:39.42 ID:0P228qqwO
「佐々木さん、これ貸してあげるー!」

中学時代に佐々木という友人が居て、同じ塾で席を並べていたこともあり、俺が塾で使う参考書などを自宅に忘れた際などはそれを取りに家に立ち寄ることもあったのだが、頑なに玄関より先に踏み入ろうとはしなかった。

「これは……?」
「すっごく面白いから読んでみて!」

そんな佐々木が今日も今日とて玄関で靴も脱がずに置物と化しているとすかさず妹が無遠慮に何やら押しつけた。愛読の少女漫画だ。

「ありがとう。大事に読ませて貰います」
「うん! 読み終わったら感想きかせてー」

何がそんなに嬉しいのか朗らかな妹に釣られたのか佐々木も珍しくシニカルでない微笑みを浮かべていて、兄として妹によくやったと褒めざるを得ない状況が生み出されていた。

「悪いな、うちの妹が」
「悪くもないのに謝罪するのは感心しないな。むしろあんなにも可愛らしい妹さんをキミはもっと誇るべきだ。それともキョンは身内を褒めるのが恥ずかしいお年頃なのかな?」

妹が可愛らしいことは俺が誰よりも熟知しているしそれを恥だなんて思ったことはない。
では何故、わざわざ謙遜したのかと言うと。

「なるほど。知り合いに妹さんを褒めて貰って悦に浸りたかったわけか。恐れ入るよ」

やれやれと首を振りながら先程の花咲くような微笑みとは似ても似つかぬシニカルな笑みを浮かべながら、佐々木はくつくつと笑った。

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2:名無しNIPPER[sage saga]
2021/10/02(土) 20:59:01.91 ID:0P228qqwO
「よう、佐々木」
「ああ。おはよう、キョン」

さて、その翌日。学校でのことである。
俺は朝っぱらから珍妙な場面に遭遇した。
以下略 AAS



3:名無しNIPPER[sage saga]
2021/10/02(土) 21:02:52.64 ID:0P228qqwO
「キョンがいつまでも大人になりきれないのはともかく、そういう男性を放ってはおけない女性は一定数は存在している筈だよ」

ヒモを養う金持ちの女みたいなもんか。
或いは夢を追う若い男に出資するスポンサー的な感覚か。どちらにせよ理解出来ないな。

以下略 AAS



4:名無しNIPPER[sage saga]
2021/10/02(土) 21:05:36.56 ID:0P228qqwO
「拗ねるのはやめたまえ。それは女子の特権だ。拗ねれば自分の望みが叶うと学習した男はヒモにすらなれない。キミが男ならあくまでも自分の望みを叶えるために努力をするべきだ。不器用でも、遠回しでも、必死にね」

そんな説教をされた俺はどんな顔をしていたのだろう。じっとこちらを見つめていた佐々木の眉が優しげに下がったので、それなりに同情を引く悲壮感が浮かんでいたのだろう。

「ほら、見たまえ。この少女漫画でも不器用な男の子が自分を変えようと頑張っている。そんなひたむきさに我々女子は胸がときめくわけだ。力になってあげたいと思わせるようになれば晴れてキミも立派なヒモの一員さ」
以下略 AAS



5:名無しNIPPER[sage saga]
2021/10/02(土) 21:08:42.24 ID:0P228qqwO
「さて、どうだっただろうね。この世の中にはどうにもならない、どうしようもないことが存在していると気づいたのは果たしていつ頃だったか。残念ながら忘れてしまったよ」

そう言われると俺も記憶が定かではないな。
欲しい物が買えないだの好物が食えないだの幼稚なことはともかくとして、どうしようもない無常感ってのはそれこそ親しい人間の葬式でもなければ理解することは出来まい。

以下略 AAS



6:名無しNIPPER[sage saga]
2021/10/02(土) 21:11:29.34 ID:0P228qqwO
「なあ、佐々木」
「なんだい、キョン」

パタンと本を閉じて、こちらを見つめてくる佐々木の瞳には少し怯えが混じっていた。
誰だってそうだろう。間違えるのは怖いさ。
以下略 AAS



7:名無しNIPPER[sage saga]
2021/10/02(土) 21:13:13.21 ID:0P228qqwO
「フハハハハハハハハハハハハッ!!!!」
「なに嗤ってんのさ!? 反省して!!」

これが嗤わずにいられるかっての。
佐々木に嫌われちまった。悲しい。
以下略 AAS



8:名無しNIPPER[sage saga]
2021/10/02(土) 21:14:57.95 ID:0P228qqwO
「お待たせ」
「どこに行ってたんだ?」

数分で戻ってきた佐々木に訊ねると、なにやら珍しく紅潮した顔を逸らしつつ、答えた。

以下略 AAS



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