18:wenppy ◇28goFgfuuI[sage saga]
2021/11/23(火) 20:47:48.07 ID:Rr9Z2Vx8O
「……食べさせて欲しいな…………?」
めぐるは暫しの沈黙の後、表を上げて口を開いた。
囁くような声量の、甘えた声が耳元で木霊する。
「え」
突然の要求に思考が固まり、ろくな言葉が出てこない。
「……プロデューサーに食べさせて貰ったら、もっと幸せになれると思う」
小さな声で言い訳するように発せられた彼女の我儘。
赤く染まった柔肌や、湿った青い眼差しが、強く訴えかけてくる。
「いや、しかしだな……」
親愛の証ということは理解しているが、職業倫理がプロデューサーの心を律する。
「──人の言うことを素直に聞いた人が救われたんでしょ?」
しかし、そう言われると返す言葉がない。
「……分かった」
プロデューサーはめぐるの皿に分けたティラミスを一口大に分ける。
金属製のフォークは冷たかったが、プロデューサーの手の温度で即座に温かみを帯びた。
「……ほら、めぐる」
プロデューサーはティラミスをめぐるの口元へ運んだ。
彼女の視線がちらとこちらに向けられ、一瞬目が合うも、すぐに黒茶色のケーキに戻る。
小さな口がゆっくり開かれるのに合わせて、手を気持ち前へと出す。
銀色のフォークが艶やかな薄ピンクの唇に挟まれて、僅かな振動が伝わった。
そっとフォークを引き抜く。
照明の光を反射して、先端が鈍く光った。
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