37:名無しNIPPER[sage saga]
2022/03/22(火) 00:30:25.83 ID:XVB8s0iW0
 しかし結局のところ、これら知識とその影響は 
 魔族にとってほとんど遊興の域を出なかった。 
  
 生存と戦争遂行のため、 
 という必要に迫られて構築された天界の統治体制とは異なり、 
 魔族のそれは結局は個人的な虚栄欲、 
 支配欲を満たすためだけの玩具だったからである。 
  
 勢力と軍勢もある程度は組織化されたとはいえ、 
 そもそも魔族の性格ゆえ、所詮は形だけであった。 
 「共食い」などを何ら変わらず行う、 
 根本的に統制困難な者共だったからである。 
  
 当然ながら、天界風の思想、すなわち平和と安寧、 
 慈愛や寛容、高潔なる大義と献身などについても、 
 魔族が吸収することはなかった。 
  
 闘争と暴虐を至上とする価値観の彼らからすれば、 
 これら天界の思想など理解しがたい、「精神異常」の類であった。 
 中には熱心に学ぼうとした者もいたものの、 
 あくまで獲物である天界勢を知るためであった。 
  
 この時点では、いわば「善き心」を理解した悪魔は 
 一体たりとも存在しなかった。 
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