22: ◆Hnf2jpSB.k[sage saga]
2022/05/21(土) 00:25:34.15 ID:bb4C09gAo
  
 押しても引いても柔らかく受け止められてしまう。 
 もう何度となくこんなことを繰り返してきた。 
 だが実際、こういう時の妻の判断は正しい。 
 私はいつも助けられてきたのだから。 
23: ◆Hnf2jpSB.k[sage saga]
2022/05/21(土) 00:26:09.08 ID:bb4C09gAo
  
 *************************** 
  
  
 ライラがこの家を出てから、幾ばくかの時間が過ぎた。 
24: ◆Hnf2jpSB.k[sage saga]
2022/05/21(土) 00:26:43.84 ID:bb4C09gAo
  
 「私は間違っていたのだろうか」 
  
 アルバムをめくる手を止め、呟く。 
 現状を考えれば、正しくなかったのは明白だ。 
25: ◆Hnf2jpSB.k[sage saga]
2022/05/21(土) 00:27:22.54 ID:bb4C09gAo
  
 「答えが聞けるのは、ライラが帰ってきた時……か」 
  
 夜ごとに書斎に引きこもる私を見かねたのだろう。 
 さも当たり前のように、こうして話し相手になってくれている。 
26: ◆Hnf2jpSB.k[sage saga]
2022/05/21(土) 00:27:59.79 ID:bb4C09gAo
  
 「ほほ、いい顔をなされている」 
  
 アルバムに収められないでいる写真の内の一枚。 
 一抹の不安が拭いきれない原因の一つでもある。 
27: ◆Hnf2jpSB.k[sage saga]
2022/05/21(土) 00:29:19.90 ID:bb4C09gAo
  
 写真の中でライラは、舞台に立っている。 
 何がどうなってそう至ったのか。 
 あろうことかライラは、日本でアイドルをしているのだという。 
  
28: ◆Hnf2jpSB.k[sage saga]
2022/05/21(土) 00:29:50.53 ID:bb4C09gAo
  
 「ご立派に成長なされている。喜ばしいではありませんか」 
  
 かつて自らが手ほどきした歌や踊り。 
 それを見世物にされてなお、目を細めている。 
29: ◆Hnf2jpSB.k[sage saga]
2022/05/21(土) 00:30:44.88 ID:bb4C09gAo
  
 「これだけで、この家を出た意味があるというものです」 
  
 別の写真では、同世代の少女たちと笑い合っている。 
 周囲に笑顔があるのは今までと変わらない。 
30: ◆Hnf2jpSB.k[sage saga]
2022/05/21(土) 00:31:34.07 ID:bb4C09gAo
  
 彼女の優秀さに疑いはない。 
 その事実があればこそ、ライラの専属としたのだ。 
  
 もしライラが一人であったなら。 
31: ◆Hnf2jpSB.k[sage saga]
2022/05/21(土) 00:32:10.06 ID:bb4C09gAo
  
 それに比べて、私はどうだ。 
 これがライラの成長につながると、本当に信じているのか。 
 ライラが自ら成長していく事を、心から期待しているのか。 
  
38Res/20.42 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 
書[5]
板[3] 1-[1] l20