星輝子「真夏みたいに気持ち悪い」
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2: ◆xa8Vk0v4PY[saga]
2022/06/06(月) 00:28:28.92 ID:Sev9O2YP0
「お前、キノコじゃなかったのかァーーーッ!!!」

地響きのような重低音が鳴り響く。
ステージは小さく、観客は両手で数え切れる。
だがこの場所は、ドームの大舞台を彷彿とさせるほどの圧倒的な熱量を放っていた。
観客は皆一点を見つめて騒ぎ、飛び跳ね、叫ぶ。
視線の先は小さな少女。
左目には星型のペイントが施され、マッシュアップ★ボルテージと呼ばれる奇抜な衣装に身を包む。

熱気を含んだ酸素は彼女の折れてしまいそうな細い喉を抜けて唄となる。
彼女の魂を通った唄は透き通るような声質を帯び、そして同時に爆発するような荒々しさをも兼ね備えた。
その絶唱は観客全員の鼓膜を、心を震わせた。
叫べ!叫べ!叫べ!
怒りを!悲しみを!慟哭を上げろ!!
思うさま感情をぶちまけろ。此処ではそれが許される。

曲が終盤に入る。最後の見せ場、ラスサビのシャウトが迫る。
観客の口角が思わず上がる。期待の目を彼女に向ける。
その期待を受けて、彼女。
彼女は笑わない。期待を裏切らない為に、全霊を込めて最高のシャウトを決める為に。冷静に。
笑わない。
笑わない。

筈がない。

シャウトに備え息を吸う時、彼女の口角が吊り上がっていた。
どうしようもなく興奮しているのだ。
どうしようもなく感情が膨れ上がり、彼女の小さな身体から溢れ出しているのだ。

パンパンに膨らんだ風船のように、ガス漏れしているボンベのように。
一種の危うさを感じるほど溜め込んだその感情は、ついに飽和状態を迎える。
それは完璧なタイミングで爆発した。聴く者全ての心を奪う程の、魂の籠ったシャウトだった。
冷静に、全霊を込めた最高のシャウトなんかよりも、ずっと、ずっと最高のシャウトだった。


キノコ・メタル・アイドル。遠く離れた3つの星が結びつき、出来た大三角形は異彩を放つ。
その星座の名前は星輝子。そのステージで、彼女以外何も見えなくなるほど眩く輝いた。



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