60: ◆vVnRDWXUNzh3[sage saga]
2022/09/23(金) 23:25:43.54 ID:8rRfKGN10
ただ、そのことに感心し喜んではいられません。何せここは、戦場のど真ん中なんですから。
ともすれば朦朧となる意識を奮い起こし顔をあげると、揺れる視界の中で水飛沫が次々と上がりました。数は5つ、搭乗していた僚艦の皆さんと同じ数であることを踏まえると、どうやら全員無事に降りることができたようです。
「あぁ………」
ですが、綾波達を【ロナルド・レーガン】からここまで運んできてくれた機体───CH-47【チヌーク】はそうはいきませんでした。
後部から激しく炎を吹き出していたチヌークはそれでも辛うじて飛行を続けていましたが、綾波達がなんとか着水したのを見届けると最後の力を振り絞るようにして機体姿勢を横に向けながら一際高く上昇します。
次の瞬間、その横腹に高角砲弾が突き刺さり、30mを超える巨躯は炎を纏いながらバラバラに引き裂かれてしまいました。
明らかに、綾波達への攻撃を身を挺して遮った動き。操縦していた陸自士官のお二人は、最後の最後まで日ノ本を脅かす存在に立ち向かうという職務を貫き通したのです。
しかし、そんな彼らの気高いあり方に哀悼や賛辞を述べる間を、“敵”は与えてくれません。
『『『ゴァアアアアアアアアッ!!!!!』』』
「敵艦隊接近!12時方向、2個艦隊!!」
「応戦するにゃ、綾波チャン、浜風チャン、カバーお願いにゃ!
軽巡多摩、砲雷撃戦開始にゃ!」
「駆逐艦浜風、旗艦指示目標視認!相手にとって、不足なしです!」
「綾波、指示を受諾します!……この海域は、譲れません!!」
綾波に続いて態勢を整え終えた旗艦の多摩さん、僚艦の浜風さんと共に、向かってくる深海棲艦の群れ目掛けて砲弾を放ちます。おそらくチヌークを落とした砲撃の主であろうそれらはすぐに反応し、汽笛代わりの咆哮で威嚇しつつ直ぐに応射してきました。
12対3。敵艦隊にはEliteこそ確認できませんが、数的不利は歴然です。加えて向こうは片方の艦隊旗艦を重巡リ級が努めており、最高火力も上回られています。
正面切ってまともにやれば綾波たちに勝ち目がないのは確かでしょう。ですが敵艦隊は、あまりにも安直に綾波たち“だけ”を目指して猛々しく進んできていました。
チヌークの動きそれ自体に気を取られたか、或いはこれを撃墜したことによって綾波たちの内幾らかをその巻き添えに出来たと誤認していたか、その理由が何であれ、
「敵艦隊、距離700地点にて停止!!全火砲こちらへ集中の構え!!」
「第二陣、今にゃ!!」
奴らの動きは明らかに、自分たちが既に挟撃されていることに気づいていませんでした。
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