16:名無しNIPPER[sage saga]
2023/01/07(土) 14:12:41.84 ID:FRtckmfc0
「私……ひとりちゃんの気持ち、もっとわかりたい」
「……」
「ひとりちゃんがどんなことを考えてるのか……どんなことを思いながら生きてるのか……ちゃんと理解したい」
(喜多ちゃん……)
「本当に、一日だけでもいいから、ひとりちゃんと入れ替われたらいいのにね」
「……そう、ですね」
郁代の指が、ひとりの指に絡まる。
恋人同士のように、ぴったりと重ね合わせられる。
どき、どきと、高鳴る鼓動を感じるひとり。
こちらがその手を少し握れば、向こうも少しだけ握り返してくれる。
緊張しているけれど、そんなやり取りが、どこか心地よくて。
こんなことは、生まれてはじめてで。
「……どうすれば、いいんでしょう」
「……」
「自分の気持ちを伝えるのって……どうすればいいんでしょうね。すみません、私、そういうの全然わからなくて……」
「……手を繋ぐだけで分かり合えるようになったら、簡単なのにね」
「ほんと、ですね」
ひとりは、お風呂でされたときのように、郁代の指先をぷにぷにと触って確かめた。
前よりも固くなっている。一生懸命練習している証拠だ。
その皮膚の感触をすりすりと触って確かめながら、一生懸命心の中で思った。
(……大丈夫です。喜多ちゃんは、本当に努力家で……がんばりやさんですから……)
今はうまくいかないことがあったとしても、きっといつか、全部がうまくいくようになる。だから大丈夫。
そんな気持ちすら、伝わってくれないのだろうか。
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