15:名無しNIPPER[saga]
2024/02/24(土) 18:06:56.06 ID:WmvWQbwLO
雑貨店でカレンダーを購入したステラは、五月一日に星印を付ける。
この日が開店予定日であり、それまでに人員と商品を用意しなければならない。本日は四月七日だ。
まだ三週間も猶予はあるが、はっきり言ってステラは鍛造のことなど何一つ解らない。
家のことなど考えず、冒険者になることしか考えていなかったのだから当たり前だ。初等教育を終えた瞬間に故郷を飛び出したのが懐かしい。
他の人に話したら鍛冶屋の息子のくせに、と思われるかもしれないが、それほどまでに跡を継ぐのが嫌だった。より正確に言うなら、故郷に留まるのが嫌だったのだ。
誰が好き好んで和やかな風景だけが取り柄の田舎町に死ぬまで居なきゃならんのだ。俺は冒険者になって楽しんでやるぜ。と宣言してボコボコにされたのは一生忘れない。
ともかく、鍛冶屋を営むには何もかもが足りない現状、最優先事項は人員を集めることだろう。
物があっても人がいなければ何もできないのだ。人がいるなら何かしらをすることはできる。
幸い、金はまだそれなりの予算が残っている。改築費が不要になって助かった。
とはいえ、材料や従業員の給料にも充てることを考えれば、あまり贅沢はできないのだが。最悪依頼を受ければどうにかなるが、それは最終手段だ。
不動産屋に賃貸料を支払い、残った予算はおよそ600万コル。
数人を雇うには充分な予算だが、改築が必要になっていたらこの予算がどれだけ逼迫していたか。考えただけで頭が痛くなる。
ここからさらに材料費や給料で捻出しなければならないのだから尚更だ。
もっと見通しはきっちりしておくべきだったとほんの少し反省したステラは、カレンダーを壁に飾る。
窓から差し込む光が、ステラを明るく照らした。
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