50:名無しNIPPER[saga]
2024/02/26(月) 01:14:44.12 ID:55RQZ85dO
 ステラが黙々と作業をするリビングでは、雨音とペンの走る音だけが聞こえている。 
 店前の通りは雨の影響で人通りは皆無であり、先日は夜まで聞こえていた雑踏も今では何も聞こえない。雨足が強いのもあるだろうが。 
  
 作業を再開して数時間。何枚もの試作品がゴミ箱に消え、本人的には会心作のチラシが数枚できあがる。 
 一枚は店先に置くとして、残りは外郭区に掲示する予定だ。四苦八苦した甲斐もあって、壊滅的な出来ではないはずだ。 
 ステラ目線では普通のチラシに見えている。本人の美的感覚が世間とズレていると言われたらそれまでだが、まあ見れないものではないと思われる。 
  
 コンスティア城での手続きも行いたいので、早速チラシ掲示に向かうことにしたステラは傘と鞄を手に取る。 
  
 「ぶぅえっくしょい!!!」 
  
 ドアノブに手を掛けると同時に、勝手口付近から人の声が聞こえた。ステラの動きが止まり、視線が勝手口へと移る。 
 勝手口は鍵を掛けているので出入りができないようになっている。先日下見した際に少し散らかっていたが、あの店員が掃除をしていなかっただけだろうと考えて放置していた。 
 人が立ち入る場所でもないし、まだやることがある。掃除くらい後回しにしても問題ないことだ。 
  
 だが、人が住み着いているとなると話が変わってくる。これは不法占拠である。立派な犯罪だ。 
 悪いことをする奴には裁きを下さねばならぬ。ステラは激怒した。 
 かのならず者をコテンパンにして吊し上げ、その罪を白日の元に晒さねばならぬと決意した。 
 しかし、ステラも鬼ではない。やんごとなき事情があったならその時は多少の便宜を図ってやるつもりだ。そうでなければお察しである。 
  
 「ぴいいいーーーー!!!?!!」 
  
 箒を片手に装備したステラは鍵を開け、勝手口を力強く開ける。 
 と同時に、ならず者と思わしき人物の姿に毒気を抜かれることになる。 
  
 問答無用でぶちのめさなかった自分の善性に驚いた。これには全世界が号泣の後にスタンディングオベーションするに違いない。と、後にステラは語った。 
 これが、ステラとネージュの出会いである。 
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