俺の高校生活がこんなに急に桃色に染まるわけがないっ!
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21:名無しNIPPER[sage]
2026/03/22(日) 22:26:54.11 ID:OjUsESPJ0
『30世紀以降の環境変動と身体構造の変化』(海王書院、3998年)

第4章 現代人の身体構造の確立

1.高速移動性貝類の跋扈と人的被害
西暦3545年、地球の旧・日本エリア内中国地方に位置するK島から、人類史上最悪の災厄が始まった。当地の固有種であったヒメタクマガイという直径2mmほどの巻貝に、微小隕石(micrometeoroid)通称「ミクロンα」が天文学的な確率によって命中。その後、検証不能な突然変異(隕石付着の地球外微生物が貝の神経系に寄生し、貝の筋肉組織を異常増殖させた可能性も指摘されている)を経て、翌日には四肢および時速130kmでの高速移動能力を獲得するに至った。

特筆すべきは、本種が驚異的な高速移動により、水面の走破を可能にした点である。これは表面張力を利用した移動様式であり、体重2mg程度の本種にとって海洋は生息域拡大のための障壁とはならなかった。
https://i.imgur.com/syfHpLG.jpeg
図 突然変異後のヒメタクマガイ

かかる変異により、旧・日本エリア全土に陸上進出を果たした本種は、爆発的な個体数増加を示した。産卵期を迎えた個体は高速移動を開始し、人間の下肢に衝突すると、靴に穴を開け皮膚を突き破り、皮下脂肪にまで到達する。貝殻表面に形成された特殊な逆棘構造(カエシ)により、一度皮下組織に達した個体は外科的処置を経ずして摘出することが極めて困難となる。さらに体内侵入後、本種は粘液を分泌して身体を固着し、創傷部位に100~150個の微小卵を敷き詰めるように産卵する。この段階において、創傷を起点とした下肢組織の壊死が誘発される。壊死の過程は緩慢であり、被寄生者は意識を保持したまま、自らの身体が黒変し崩壊する様相を数週間にわたり視認することを余儀なくされた。壊死組織が悪臭を放ちながらも、神経組織および痛覚が最終段階まで保持され続けたことは特徴的である。患者の大多数は、自らの下肢を「見ないでくれ」と懇願しながら絶命した。 


2.  下肢切断の政策決定
旧・日本エリアでは新宿駅東口から新宿区役所βに至る徒歩5分の移動中に、288体ものヒメタクマガイと衝突した男性の症例が記録されている。当時のカルテには「初期段階では掻痒感を呈した。続いて疼痛に変化。3日目には下肢の身体感覚が喪失。4日目には皮下における何らかの蠕動を視認した」という記載が残っている。

事態の深刻性を重くみた旧・日本エリア厚生労働大臣は、3548年、「貝くらい駆除できるのではないか」という反対意見を退け、超法規的措置により、全国民に対する下肢切断処置の実施を義務付けた。具体的には、成人男性の場合、膝上15センチほどの位置で切断を行うことが推奨された。切断部が長すぎると、着座時に男性器を圧迫してしまう危険性が考えられたからである。
同時に「歩けなくなるのではないか」という批判を回避するため、上半身を台車に固定し、移動手段を確保することも義務付けた。

迅速な全国民への処置実施のため、全国の公民館および学校施設が臨時手術室として転用された。強制力を伴う召喚は、当初こそ反感を招いたが、神経系に影響を与え意思決定の誘導を可能にする新薬の投与によって、施術に反対する者は現れなかった。そのため、人類の意識改革、および施術の実施はスムーズに行われ、なかにはノコギリを用いて自らの下肢を切断する者まで現れた(この人物は、のちに政府より表彰を受ける)。公民館の受付を通じて、下肢切断の順番待ちをする住民の姿は、当該期の記録映像にも確認できる。


余談となるが、国民全員の下肢切断業務を受託した業者である「アシナイナイ(株)」が当該期における地球随一の大企業となったことは周知の事実である。同社の社訓は「脚をなくして幸せな未来へ」。本社ビルのエントランスには、創業者・佐藤壮馬が自ら切断した下肢がホルマリン固定標本として展示されている。 


3.地球規模の被害拡大、そして海王星への移住
ヒメタクマガイは西暦3550年の時点では既に水面走破能力により日本海を越え、中国、ロシア、韓国等の近隣諸国に拡散しており、これらの地域でも深刻な被害が報告されていた。

さらに3552年頃、ハンガリーにおいて腹足類の一種であるカタツムリが高速移動能力を獲得したとの報告がなされた。後の検証によりこれは、強風で転がった殻を目撃者が「高速移動するカタツムリ」と誤認したものだと判明したが、旧・日本エリアにおけるヒメタクマガイと同様の変異が独立発生した可能性が危惧され、国際社会に大きな動揺を与えた。ハンガリー政府による誤報は真実として拡散され、各国政府の判断に決定的な影響を及ぼした。各国は旧・日本エリアの前例に倣い、予防的措置として国民に対する下肢切断処置を相次いで強制するに至った。

このような世界規模での災厄の危惧を受け、3554年、旧・日本エリアは漸進的な開発を進行していた海王星への惑星間移住の即時実行を国際連合に提案した。国連事務総長が提案を採択し、各国首脳も賛同したことにより、翌3555年には移住計画が実行に移された。

提案の背景には、下肢切断処置後に発生した深刻な問題が存在していた。台車の使用により人類への直接的被害は著しく減少したものの、時速130kmで地表を疾走する貝類が台車の車輪や機構部に衝突し、台車本体を破損させる事例が頻発した。同様に住宅への損傷も解消し難く、戸外において身体の周りに石を並べて眠りにつく人々が急増した。脚、台車という地表における移動手段、加えて住宅をも失った人類にとって、地球上での生存は極めて困難な状況となり、惑星間移住以外に選択肢は残されていなかった。

人類は40世紀前半には既に核融合推進技術を実用化しており、外惑星への航行は技術的に重大な障壁とならなかった。海王星には先行して建設されていたテラフォーミング済みのコロニーが存在し、一部区間には居住環境も整備されていた。

一方で、国家規模での大量移動は前例を欠き、輸送船の建造能力、運用体制、航路管理のいずれもが実行能力を大幅に逸脱していた。ヒメタクマガイによる人類滅亡を過度に危惧するあまり、時期尚早の決断を下したという批判は、否定することができないだろう。

結果として、海王星への移住は苛烈を極めた。輸送船の大半は火星にすら到達できず、多数の人類が犠牲となり、数世紀単位で社会構造の再設計が必要となった。3998年の現代にいたってもかかる再設計は完遂できておらず、極めて多くの課題が残存している。


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