過去ログ - 闇霊使いダルク「恋人か……」
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169:1[sage]
2010/09/10(金) 16:59:08.97 ID:fnPPJpYo
 ディーのおかげで壺魔人はすぐに見つかった。
 彼は露天風呂地帯の中心部に掘削された、浅い洞穴の中にいた。
 
 薄暗い穴の中は、床から天井棚にかけてあらゆる壺がギッシリ敷き詰められていた。
 入ってすぐ正面にカウンターがあり、まるで壺専門の道具屋といったところ。
 
 物音に気付いた店主が振り向く。

『オっと珍しいお客さんだネ』

 ターバンを巻いた一つ目の顔。
 にやけた顔模様の大きな壺から、両腕と首だけ飛び出ている炎族モンスター。
 一見して禍々しいナリだが、その高めの声調には気さくな印象を受けた。

「こ、ここには初めて入浴するのだが」

 師匠の話によると、この温泉の利用者はみんな彼から借りた壺の中に衣類所持品を管理しているらしい。
 その壺は頑丈でそうそう割れず、フタをすれば水一滴通さない。
 何より重宝される理由は、耐水・耐熱性に優れること。ここの環境に最も適した洗濯カゴなのだ。
 なんでもこの壺魔人は、誰彼かまわず壺を貸してくれるらしいのだが――。

『フーン、ボクちゃん名前ワ?』
「ダルク」
『ココのルールは知ってル? ケンカしないだの、悪さしないだのノ』
「それは知っている」
『ジャ問題ないネー。ルールはちゃんと守ってネー』
「ああ、もちろん」
『ジャちょっと待っててネ。ソノ持ち物入れるサイズの壺持ってくるカラ』
「頼む」

 話がサクサク進んで助かる。
 一見さんということで少し緊張していたが、特に構える必要もなかったようだ。

『ハイヨ』

 カウンターにドシンと置かれた黒っぽい壺。
 表面に浮き出たにこやかな顔模様は、さしずめ壺魔人のトレードマークといったところか。不細工なのがまたイイ。

 そ、それにしても重いのだろうか。
 取っ手を握ろうとしたそのとき、まるで予期せぬ壺魔人の声が落ちてきた。

『ヒト壺500DPネ』
「えっ? 500?」

 DP。デュエルポイント。お金。この世界のどこでも使える通貨。
 硬貨と紙幣と二種類あるが、特別な素材と複雑な魔法を用いて量産されるため、偽造はきわめて困難――。て。

「か、金を取るのか!?」

 胸元がヒュッと透いた。予想外の事態。
 入浴そのものは無料、しかし壺の代金は別? そ、それはまずい――。


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