過去ログ - 闇霊使いダルク「恋人か……」
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185:1[sage saga]
2010/09/15(水) 17:05:37.71 ID:T3JLIYMo
 ダルクの格好。
 一足のブーツ(入浴前に脱ぐ)、両腕・両足首に幾重にも巻かれた包帯、両手首に千切れた手錠。
 片手に魔鳥の頭蓋を模した愛用の杖、他方にすべての荷物を詰め込んだ壺魔人マークの壺。

 あとは全裸で、タオル一枚腰に巻いた状態だった。
 奇妙な風体なのは重々承知、こんなんで街を出歩いたら変質者確定だ。
 そうでなくても人型モンスターではダントツで戦士族が多いこの環境では、魔法使い族の少年など浮いてしまうこと必至だ。
 ああせめて彼らには及ばずとも、少しは見栄えのいい体つきを持っていれば。

「はぁ……」

 正味な話、ダルクの肌身の体格は普通の痩せっ子のもので、特にコンプレックスを抱くほどでもなかった。
 だが日光を浴びないせいでひたすら白く、また脂肪太りが皆無のスラリとした身体を、師匠に茶化されたことがある。
 そのとき深いショックを受けたダルクは、以降は誰かに素肌を見せることに抵抗を持つようになった。

「オレはれっきとした男だ! ディー、行くぞ! オレは男!!」

 だが今回は事情が違う。
 いつまでも劣等感に縮こまっているわけにはいかない。

 疑問符を浮かべる使い魔をよそに、ダルクはいきり立って足を踏み出した。
 これから会いにいく火霊使いもまた、自分と同じ魔法使い族。
 壺魔人が「オトコノコ」と呼んでいたことから、年も自分とそう違わないだろう。

 「火」の本質と気性、また男性ということから、彼はおそらく自分よりは筋肉質であることが考えられる。 
 しかし将来ライバルになるかもしれない相手に、体格の差ぐらいで気おくれしてはいられない。
 最初の印象は大切だ、弱みを一切みせることなく堂々と挨拶してやろう――。

「……ん?」

 瞬間、ほんのわずか足場が崩れ落ちる感触。
 なにげなく足元に目を落とす。
 急傾斜の断崖の奈落に、パラパラと砂利が落ちていくところだった。
 ダルクは心臓が飛び跳ねる思いで後ずさった。

「あ、あ、あぶ……」

 すぐに岩壁に当たる背中。
 ここにきて初めて道の狭さを知る。いや、そもそもここは道なのか?
 周囲に漂う湯気のせいでまったく気付かなかった。いつの間にこんなガケっぷちに――。

「み、道を間違えたか?」

 そんなはずはない。
 壺魔人に教えてもらった通りの目印は確認したし、これから行く先にも湯気が立ち上っている。
 しかしそうなると妙だ。火霊使いはわざわざこんな険しいルートを進んだことになる。

「ディー、念のため確認しに行ってくれ」

 使い魔はすぐさま了解の意をみせると、元気に岩壁の奥へ飛び立っていった。


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