233:1(ストック終)[sage saga]
2010/10/02(土) 15:47:45.02 ID:f7bOuCY0
◆
なんだか急に温泉が熱くなった気がする。
地下のマグマが流動する影響だろうか?
……あ、熱っ、熱い! いつの間にか熱湯!!
なんでこんな急に? 温泉ってこんな危ないところだったっけ!?
「な、なぁ、何か急に熱く――って、おいっ、大丈夫か!?」
『彼』の様子がおかしい!
頭がフラフラ揺れて――霊力が漏れている!
ダルクは急ぎ赤髪のもとへ駆け寄った、いや泳ぎ寄った。
「あっ熱っ! な……なんなんだこれは」
彼の方に近づくにつれ、湯の温度が増しているような気がする。
彼は火霊使いだが、もしかしなくてもこれは彼の仕業なのか?
なにか異変が起こったせいで火の霊力が漏洩し、この温泉を煮えたぎらせているのか?
とにかく急がなければ、このままでは二人とも危ない! 熱い!!
「うぐっ……おい……大丈夫か……」
ダルクは全身の皮膚が悲鳴を上げるのも我慢し、すでに沸騰をきざし始めた煮え湯へと腕を伸ばした。
彼の肩口と思われる位置に、手を業火に突っ込む思いでまさぐる。熱、熱いぃ!!
「おいっ!」
ついに探り当て、触れたその瞬間、
「触るな!!」
「なっ」
甲高い叫びとともに突っぱねられた。拍子に熱湯が飛び散る。
不安そうに空中を巡回していたディーにそれが当たり、可哀そうにディーは猛スピードでのたうちまわった。
ひ、人が親切に助けようとしたのにその態度はないんじゃないか!
ダルクは熱さに耐えかね距離を取ったあと、ノドまで出かかったその台詞を吐こうとした。
その刹那、彼が初めてまともに顔を向けた。
視線が交差する。紅蓮を思わせる炯々とした瞳。凛とした顔立ち。
そしてなにか戸惑ったような、真っ赤な表情。
ダルクは思わず息を飲み込んだ。
確かにいま、胸が高鳴ってしまった。
バカな、こいつはだって男で――
「とっとと出ていけ、このヘンタイ根暗もやし野郎!!」
直後に放たれた罵声は、その場一帯に大きく響き渡った。
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