過去ログ - 闇霊使いダルク「恋人か……」
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375:1[sage saga]
2011/04/04(月) 01:58:41.55 ID:GmNp59Rao
 深い暗闇を掲げていた夜空にほんのり青みがかかる。すでに夜明けはそこまできていた。

 傾いた月夜が照らすコロッセウムでは、人知れず霊術使い同士の私闘が繰り広げられていた。
 強力な一撃『ビッグバン・シュート』の余韻がまだ残っている足で、炎の使い手は駆け抜ける。
 風呂場の一件での雪辱を果たすため、あの黒髪もやしヤローを心ゆくまで焼き尽くさんと杖を握り締める。

「あんにゃろー……」

 ヤツが隠れたとおぼしき三本の柱のうち、右の柱はもぬけの空だった。このスカゴブリンに馬鹿にされたような気分!
 残るは客席の石製アーチにつながっている中央の柱と、コンが向かっているはずの左の柱だ。

 今向かっている中央の柱にヤツがいたなら、自分より足の速いコンがすでに到着しているはず。
 コンの咬みつきでヤツの行動を封じているところへ、会心の火霊術をたたきこんで一件落着だ。

 が、ヤツは自分と同じように霊術を使う。
 しかも六属性のうち、突出して得体の知れない「闇」の使い手ときた。
 今まで「炎」「地」の相手とばかり戦ってきたが、「闇」との手合わせはほとんど記憶にない。
 
 そうだ、コンは大丈夫か。
 つい今までの相手と同じノリでコンに指図してしまったが、今回はなんか勝手が違うかもしれない。 
 あまり――というかまったく考えてなかったが、場合によってはコンがやられる可能性もあるか?
 しまった、ヤツの狙いが最初からコンと自分を離ればなれにすることだったとしたら。

「急がねーと!」

 思い立つより早く、彼女はスピードを跳ね上げた。
 大技を繰り出したばかりにも関わらず、石畳の上を脱兎のごとく駆けていく。
 腰を下げ、前傾姿勢で体重を前にあずけながら足を動かす。師より教わった走り方で、これが速い。
 並の魔法使い族ではありえない快走だが、それは彼女が常日頃からいそしんでいた体力づくりの賜物だった。

 ブレない一直線で先へ先へと駆け抜ける火霊使い。みるみるうちに目的の柱に近づいていく。
 ようやく額に垂れはじめた汗は、走り疲れの脂汗か、それとも使い魔の身を案じた冷や汗か。
 その一筋がこぼれるより早く――彼女は折れた柱を破壊してから、ものの十数秒で中央の柱に到達した。

「いるのかっ」

 今回はコンが巻き添えになるかもしれないので、柱に攻撃はしかけない。
 柱にまとわりついている黒いモヤに触れない程度の距離で急ブレーキ。

 彼女は杖を向けたまま、せわしげにぐるりと柱の周りを回った。
 いるならいるですぐさま攻撃、いないならいないで最後の柱へコンの援護に向かわなければならない。
 
 直後。
 柱の陰からいきなり何かが飛び出した!
 反射的に杖を振り上げ、それを振り下ろしかかる彼女。
 柱から飛び出した何かは、あまり大きくないキバをのぞかせ、彼女の足に喰らいつきにかかる。
 
「……ありゃ?」

 硬直。
 両者が互いを確認して、その格好のままピタリと止まる。
 振り下ろしかけた杖をすんでのところで止めている火霊使いと、前のめりになった体勢で大口が開けっぱなしのきつね火。



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