376:1[sage saga]
2011/04/04(月) 02:00:19.13 ID:GmNp59Rao
「コン?」
主の言葉に反応した使い魔は、申し訳なさそうに耳と尾を垂らしておすわりした。
予想外の事態に彼女は困惑する。人差し指をこめかみにあて、小首をかしげて少考タイム。
「えーと、てことは?」
三又に分かれた黒いモヤ。伸びた先は三本の柱。
走っている最中も、最初にわきだした位置から柱までの黒いモヤはしっかり見張っていた。
今夜ははっきり月が出ているから、ヤツがモヤから出てきたならすぐに分かる。
しかもこの伸びたモヤ、途中で効力が切れたのかさっきよりもずいぶん薄まっている。
モヤの向こう側の景色がみえるほどだったが、三本のいずれにもそれらしい人影はない。
自分の死角はコンが担っており、コンは自分以上に眼が利く。見逃しは考えられない。
その上で、三本の柱はすべて当たった。
コンが至近距離で敵を見つけられないはずはないし、自分も折れた柱を粉々にした。
そうして最後の柱でコンと自分がお見合い。どういうことか。どこへ消えた。
まさか――逃げた?
「おいっ! まさか逃げたんじゃねーだろーな!?」
その発想にたどりつくと、彼女は見えない相手に向かって叫び始めた。
「おい、コロッセウムでのトンズラはどういうことか分かってんだろーな!
一度ココで受けた勝負から逃げるってのは、デントーを踏みにじる行為なんだぞ!
逃げるならちゃんと出てきて負けを認めやがれってんだ!」
大声でまくしたてても腹の虫は治まらない。
出てきたら問答無用で黒コゲにしてやる。
彼女が杖に霊力をこめたそのときだった。
――かつん。
とっさに振り向く。
石。小石が上から降ってきた。上。
「上か!?」
観客席の巨大なアーチと繋がっている柱。
先がぐるりと曲がって客席に続いているので、これを登ることができれば簡単に脱出できる。
そうか、これがヤツの狙いだったんだ。
わざわざ三ヶ所に黒いモヤを広げたのも、つまり上へ登るための時間稼ぎ。
自分たちが効率よく挟みうちにするために、この柱を最後の後回しにすることを見越して!
「おい、始めから逃げるハラだったのかよ! 降りてきやがれ!」
怒声をあげるも返事はない。
それどころか、そんな態度を小ばかにするかのように、アーチの上から再び小石が二つ三つ落ちてきた。
「このヤロー!!」
もう許さない。
何が何でもヤツを丸焼きにしてやると決心した瞬間だった。
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