386:1[sage saga]
2011/04/09(土) 02:01:15.68 ID:/bmAxi7Vo
(とりあえず手を打たなくては)
『漆黒のトバリ』は前述したように単体では何の防御策にもならない。
魔法はもちろん物理攻撃もなにもかも筒抜けだ(特に光には滅法弱い)。
そして、目くらまししたところで何も安心はできない。
初見の相手は訝しがって近づいてはこないが、その暗闇の中に術者がいること自体は分かる。
したがって飛び道具を連発したり変則的な手段に走るのが常で、そうなったらこちらも防戦に転じなければならない。
下手をするとそのままワンサイドになって終わってしまいかねないので、とにかくダルクは早急に次の一手を打つ必要がある。
(やはりあの柱、使えそうだな)
ダルクはコソコソと身体をひねり、遠くに見えるコロッセウムの装飾柱を視界に捉えた。
このフィールドに来て、戦いの気配を感じたときからすでに思い描いていた作戦。
『漆黒のトバリ』をあれに向かって飛ばし、あたかもそれをたどって柱に隠れたようなフェイクを仕組む。
柱同士の間隔が近くてはダメだ。またここからの距離もあまり違わない方がいい。
よし、あれとあれとあの柱にしよう。
(いけっ)
ダルクは半身のような体勢から、杖にこめた霊力を勢いよく放出した。
一発目。人一人が隠れるぐらいの太さで飛んでいき、見事目的の柱に付着。
これだけの距離をこの太さで飛ばせられるのは、やはり夜闇の確保に不自由しないことと、ダルク自身が好調だったこと。
バーニングブラッドの露天風呂は心身の疲れを吹き飛ばしてくれるどころか、失った魔力までも全快にしてくれた。
(よし、調子がいいぞ)
続けて二発目、三発目と黒い道を作る。
音はほとんど立てておらず、すべてダルクの背後に放ったため、相手も気づきにくいはずだ。
「何だってんだよ!」
案の定、相手も『漆黒のトバリ』の正体が分からず途方に暮れて――
次の瞬間!
横になっている身体の上半分を、やぶからぼうに高温がなでていった。
危険を察知したときには、すでにファイヤー・ボールは頭上を通り過ぎたあとだった。
危ない、いやこれでいい、相手の目は確実に誤魔化せている。それよりも油断しないことだ。
今のは狙い通り逸れていったが、あれの威力は決してバカにならない。二発ももらえばもう終わりだ。
もう少しで「あちっ」などと漏らすところだった口を押さえ、ダルクはいっそう壺の陰に身をよせる。
念のためもっと『漆黒のトバリ』を広げておこうか?
いや、コンディションがいいとはいえ、さすがにこれ以上の霊力消費はあとが怖い。
またこの術は闇を広げる量に比例して密度が薄くなり、持続時間も減っていく。
この広いコロッセウムで過度な保険をかけるのはかえって危険だ。
「あ、あの野郎……」
そうこうしているうちに、怒りで震えている火霊使いの声が耳に入った。
どうやらさきほど放った三又の黒い道に気がついたようだ。
同時にダルクは、少しだけ口の端をつり上げる。
いま彼女は、「この野郎」ではなく「あの野郎」と言った。
それはすなわち、敵がすでにこの場にいないと無意識に決めつけている表れだ。
ダミーの黒道はうまく機能している。直接的な進展はないが、形勢はリードしているとみていいだろう。
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