39:1[sage]
2010/06/08(火) 23:36:01.70 ID:FUJqtM6o
ダルクはとっさに、手についた毛布をバサリとふりかけた。
ギゴバイトは簡単に包まったが、そのまま毛布玉の中でじたばた暴れ続ける。
「ぎょ、行儀が悪いなギコ君、主人と違って」
丁寧に壁に掛けてあった自分の杖を手に取るが早いが、その先端を大混乱の毛布にあてた。
ダルクの身体から黒い靄が浮き上がり、杖の先端が禍々しい気焔をあげる。
「もう一度おやすみだ……っ」
ダルクが合図のように杖を握り締めると、杖の先に充満した闇エネルギーがあっという間に毛布の中へ染み渡っていった。
それと同時に毛布玉に変化が生じる。
荒々しい動きが徐々に鈍くなっていく――。
毛布の中は闇。その深さを一時的に強くした。
加減にもよるが、対象に全く危害を与えることなく闇に堕とすことができる。
その用途の多くは、まどろみへの誘い。
「効いたか」
やがて毛布はすっかり大人しくなった。
霊術成功、ギゴバイトは無事に睡眠状態へ陥ったようだ。
ダルクは、この使い魔が毛布の中でさえ暴れているとき、何となく自分が襲われた理由が分かったような気がした。
ギコ君は使い魔のモンスターとはいえ、まだ分別のない子供。
主人がダルクに親身になっているのをみて、まるで母親が他の誰かに盗られたような錯覚があったのだろう。
いや、裸体を目撃したときのあの凶悪なタックル。
あれはある種、執念じみた害意を感じた。
つまりこの使い魔はあるいは、エリアを母親以上に……?
(……オレでも……エリアみたいな恋人がいて、その裸を別の男に見られたりしたら、本気で怒るかもな)
ダルクは「でもこれから主人に迷惑かかるようなことは控えろよ」と毛布玉を軽く叩いた。
叩いた部位がちょうどトゲのあるところだったらしく、チクリと手の平に痛みが走る。
ギコ君の無意識の返答のように思えた。
「で――そのご主人様だけど」
ダルクは顔を上げた。
机上に腕枕を敷き、穏やかに寝入った水霊使いの姿がそこにあった。
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