過去ログ - 闇霊使いダルク「恋人か……」
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400:1(ストック終)[sage saga]
2011/04/14(木) 16:15:36.34 ID:oa6Sz5kro
 月の姿がみえない。ついに沈んだのか雲に隠れたのか。
 とにかくダルクがバーニング・ブラッドを訪れてから相当の時間が経過していた。
 コロッセウムの一本の柱に、思惑は違えど二匹の使い魔と二人の霊使い――この場の全員が集結する。

 まず最初に柱に到着したのはきつね火・コン。
 主人に指示されたとおり左の綺麗な柱を調べてみたが、いくら集中力を研ぎ澄ませても何かがいる気配はなし。
 内心ホッとし、急ぎ中央の柱に向かったのだった。
 遅れたら主人に怒られてしまうという焦燥感もあったりなかったり。
  
 コンと僅差で到着したのが、さきほど大技を繰り出したばかりの火霊使いの少女。
 四つ足のケモノに負けるとも劣らない速さで駆けつけるも、息の乱れは一つもない。
「いるのかっ」「……ありゃ?」「コン?」「えーと、てことは?」
 ハタから聞く分には一人コントにしか聞こえない言動が繰り広げられ、一時にぎやかな雰囲気が醸される。
 
 次に柱にたどり着いたのはダルクの使い魔・ディー。
 敵に気づかれないようぐるりと旋回しながら滑空し、観客席側から迂回しての着地。
 足元にはすでに敵がうろついているが何も問題はない。
 アーチの上で手ごろな小石を確保。準備万端。あとは主人の到来を待つだけ。
 
 最後に、早歩きの速度をゆるめたダルクがまもなく柱にたどり着こうとしていた。
 火霊使いときつね火は、幸いこちらにまったく気がついていない様子。
 ダルクはコクンと唾を飲み干す。ついにこの作戦最大の難所に直面した。

(ここが正念場だ……)

 迷彩の要である『うごめく影』を解いて、別の闇霊術をきつね火に使う。
 闇霊術―『催眠術』。
 エリアの使い魔ギコ君にも使った、低級モンスターを眠らせる術。
 あの火霊使いにも直接使えないことはないが、ピンピンしている彼女にはまず効かないとみていい。
 万全の状態相手に有効なのは、明らかに格下のモンスターだけだ。
 ――そもそも、そんな簡単に女の子を眠らせられたら、ちょっと、まぁ、いろいろと問題だろう。
 ……でもあの勝ち気な女の子が静かに寝入ったら、一体どんな寝顔になるのか……。

(いやいや今そんな場合じゃないだろっ)

 また、ダルクの使う催眠術には他にも条件がある。
 この術は闇を濃くすることで睡魔へいざなう仕組みなので、相手が暗闇の中にいることが前提なのだ。
 今の状況でてっとりばやくきつね火を眠らせるには、『漆黒のトバリ』を放出して暗闇に包み込むのが一番だろう。
 だがこれが難しい。きつね火が周囲の異変に対し、大人しくしてくれるとは思えない。
 元々これでうまくいくと踏んだから決行したのだが、ディーの小石投下でどれだけ注意を引けるかがカギだ――。
 
 そのときだった。
 
「おいっ! まさか逃げたんじゃねーだろーな!?」
 
 ダルクは突如響き渡った怒鳴り声にはっとした。
 彼女が観客席に向かって大声を上げている。
 柱まであと小股で十歩程度といった距離。
 使い魔も主の声にビクビクしている。

(ここだ)
 
 ダルクは自分でも驚くほど落ち着いていた。
 大声にひるむ素振りも見せず、スピードは落とすものの、堂々と柱への接近を再開した。

 きつね火の尻尾にともった火の玉が焦点。
 ダルクは右手の杖を握りしめ、標的へ一歩一歩迫っていた。



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