410:1[sage saga]
2011/04/19(火) 15:33:43.80 ID:SS7qLjRxo
ビッグバン・シュートの爆発からいくばくか経ち、夜のコロッセウムは再び静寂を取り戻そうとしていた。
が、またしても同じ騒音の元凶――敵を見失って憤慨している少女によって、それは切り裂かれた。
切歯扼腕もはなはだしい口上が、コロッセウムの一角に響きわたる。
「おい、コロッセウムでのトンズラはどういうことか分かってんだろーな!
一度ココで受けた勝負から逃げるってのは、デントーを踏みにじる行為なんだぞ!
逃げるならちゃんと出てきて負けを認めやがれってんだ!」
集中力を研ぎ澄ませているダルクにも、一応その言葉は耳に届いていた。
コロッセウムの伝統。そんなものがあるのなら、なおさらこの勝負から逃げるわけにはいかない。
この戦いはいわば外の世界に出てからのデビュー戦、しかも相手は同格の霊使い。
ダルクは闇の世界で鍛え上げた自分の実力を、結果で知りたかった。
勝ちたい。
その一点の思いが、ダルクの足を突き動かしていた。
(ついた)
やがてダルクは、標的のほんのすぐそこまで辿りついた。
『漆黒のトバリ』の範囲内でギリギリ近づける距離。
きつね火の尻尾の炎が目の前で揺れている。
きつね火は怒り心頭の主人が気が気でならないらしく、その場に縮こまってくれている。
こちらには背中を向けたまま、まるで気づいていない。
ダルクは慎重に壺魔人の壺を足元に置き、ゆっくりと杖を振り上げた。
これから自身の『うごめく影』を解き、きつね火を『漆黒のトバリ』で覆って『催眠術』をかける。
忙しいうえにミスは許されず、高い技量を求められる動作だ。
(やるぞ)
ダルクの杖は振り上げられ、いつでも術を飛ばせる体勢だ。
だがすぐには『うごめく影』を解かない。じわじわと紐解くように姿を現す。
いきなり気配を現してしまったら使い魔はおろか、火霊使いにまで感づかれてしまう可能性がある。
少なくともエリアを覗いてしまった時はそうだった。今は集中力が途切れるようなものはないから大丈夫だ。
だが大丈夫ではなかった。
その直後、きつね火が不審げに首を逸らしたのだった。
何かを探るように、右へ……左へ……と、ダルクの眼前で周囲をうかがっている。
ま、まずい、感づかれた!
一瞬でもエリアのボディラインを思い浮かべるのではなかった!
ダルクは『うごめく影』の解除を半ばで中断し、身体を石のように固めた。
下手に動くのは自滅行為、かといってここで『うごめく影』を塗りなおせば余計に不自然。
板ばさみにさいなまれたダルクだったが――
(だ、大丈夫だ)
ここを凌ぎきればチャンスが巡ってくることも分かっていた。
(頼んだぞ、ディー!)
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