433:1[sage saga]
2011/04/24(日) 15:33:42.02 ID:FZwCGDgSo
空はすでに明け方で、まもなく日の出だった。
夜行性モンスターの活動時間は終わろうとしており、ダルクも一刻も早く眠りにつきたかった。
また太陽の光がさすようになると、闇属性であるダルクは一気に力が弱まってしまう。
そうなるとさらに『うごめく影』の効果も消え、非常に危険な状態になる。
ダルクは足早に下山し、なんとか自分の家がある森に到着した。
森の中は天上が木々に覆われ、日光はあまりさしこまない。
ここまでくればもう安全だった。
同時に、この時点でダルクはすっかり気が抜けていた。
「やっと帰った……」
やがて家に到着。
ディーを屋外に放ち、自分の汚れた衣服をパッパと払う。
そうして杖を使って家のカギを開きかけ――施錠がなされていないことに気づく。
(そういえば家を出るとき、わざとかけなかったんだな……)
ダルクはあまり考えもなしに家の中に入り、ドアの内側からカギをかける。
強固な結界つきの施錠で、基本的にダルクがこの杖を使わなければドアの開閉はできない。
家の中は暗い。
だが照明をつける必要はない、いますぐ寝るのだから。
杖を壁にかけ、ローブを脱ぎ捨てる。
ダルクは大きなあくびをしながら、ゆっくりベッドに向かった。
今日は本当にいろんなことがあった。
今日というのは、エリアの家で目覚めたところからだ。
そこで椅子で眠っていたエリアをベッドに運ぼうとして、誤解を招いて逃げ出した。
家に帰り着いてウィンに出会い、色々あってそのまま一晩泊めることになった。
男女二人屋根の下は抵抗があったから、一人で温泉に行くことを思いついた。
異種族たちのるつぼ「バーニング・ブラッド」では、壺魔人の冗談が始まりだった。
男と思い込んだヒータに会いに行き、猛烈な誤解を招いてコロッセウムで戦う羽目になった。
辛くも勝利し謝罪に成功(?)したものの、温泉で回復した心身にまた疲れが溜まってしまった。
こうして現在に至るわけだが、これが外の世界に出てなんとまだ二日目の出来事だ。
その間に三人もの女の子とのやりとりがあった。
水霊使いのエリア、風霊使いのウィン、火霊使いのヒータ。
しかも全員、破格の魅力をそなえた容姿の持ち主で――ってそれは今関係なくて。
この世界では、自分以外の精霊使いは全員女性なのだろうか?
いや、ただの偶然だろう。精霊使いは男女どちらでも差異はない。今までの出会いは偶然の産物。
残る六大属性のうち、まだ出会ってないのは地霊使いと光霊使いか。
この二人まで女性だったら肩身がせまくなるどころではない。
自分は女の子との付き合いがすこぶる奥手なのだ。もはや終わりの始まり。
まぁ……いまはとりあえず眠ろう。思考するのも疲れてきた。
明日はどうしようか。起きてから考えよう……。
ダルクはベッドの布団をめくりあげ、その身をもぐりこませた。
その瞬間まで、ダルクは今日はもうどんな受難もありえないと確信していた。
なんだか布団が温かい。妙にやわらかい感触。おまけにいい匂い。
これらを一瞬で感じたのと同時に。
「ふきゃ」
ダルクの耳に突き刺さったのは、ウィンの間抜けな声だった。
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