458:1[sage saga]
2011/04/30(土) 17:37:42.23 ID:qsCpNoado
ダルクはそれはもう盛大にぶったまげた。
短い絶叫とともに毛布を跳ね上げ、ベッドから転がり落ちて床へ激突。
受け身そこなった痛みも無視し、尻餅をついた格好で壁にぶつかるまで後ずさり。
「ウィ。ウィン」
無意識に口をついた彼女の名前か、それとも思わず口走った謎の言葉か、もはやそれさえも定かではなかった。
ただ今の今まで、女の子一人をこの家に泊めていたことを完全に忘れ去っていた。
そう、まだ明け方だった。夜行性ではない者がまだ眠っていたとしてもおかしくはない。
家のドアが開いていた時点で普通に考えたら分かるはずなのに、どれだけ気が緩んでいたんだろう。
(う……うかつだった。なんてことを……)
荒い呼吸も胸の鼓動も簡単には鎮まりそうにない。
いないと思い込んでいたベッドに誰かがいたというドッキリ。
のみならず、それが自分と同じ年頃の可愛い女の子とくればパニックにならずにはいられない。
いまどこかウィンの身体の部位に触れなかったか。
温かいような柔らかいような感触の正体はなんだったのか。
なにか「ふきゃ」とか聞こえたが、今の拍子でカンペキに起こしてしまい、また誤解されたのではないだろうか。
「んぅん」
毛布を半分はぎとられたウィンがもぞもぞと動き出した。
腰砕けのダルクはおっかなびっくり息を呑んで様子を見守る。
「むくり」
言いながらウィンはゆっくり上半身だけ起こした。
ポニーテールを解いた緑髪のあちこちがピンピン跳ねており、衣服も左肩がずり落ちている。
ダルクはまた別の意味で息を呑んだ。全体的に乱れた寝起き姿が妙に色っぽい。
鎖骨のラインのはだけ具合に、コートを脱いだおかげではっきりインナーに浮き出ている胸のふくらみが――
「い、いやちがっ」
「ん」
「あ……」
ウィンはゆっくりとダルクの方を向いた。
ダルクは、生贄の祭壇に選ばれた迷える子羊のように身体を震わせた。
もう女の子相手に誤解を招くのはこりごりだ。頼むからどうか無難な展開に――。
彼女は絶対的に眠そうな眼をうっすら開けて……閉じて……またうっすら開けて……。
「もうちょっとねる」
ポタンと枕に落ちた。
ものの数秒で、小さな寝息が部屋の中を満たし始める。
なんとも無難な展開だった。
ダルクはほっと一息つき、同時に弱々しく顔を綻ばせた。
「もうちょっとねる」。そんなセリフにここまで救われたのは生まれて初めてだ。
ウィンがマイペースな子で本当に助かった。
これがもしエリアだったら使い魔も駆けつけて一騒動で、ヒータだったら一瞬で消し炭にされていただろう。
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