487:1[sage saga]
2011/05/13(金) 16:13:55.56 ID:7lFnSfMFo
(ディー)
ダルクは道の端を歩きながら、自身のコートの右脇をのぞいた。
間近で使い魔のコウモリと目が合う。薄目パチクリのD・ナポレオン。
ウィンのまねをして試しに使い魔を忍ばせてみたら、案外これがいい感じに収まって、以降これが今夜の標準となった。
ディーには悪いが、自分の家を出発して民家がちらほら見え始めたあたりから、ずっとコートに隠れてもらっている。
コウモリなんて連れ歩いているところを見られたら、自分が闇の使い手であることが周囲の人々に感づかれてしまうからだ。
ダルクは、エリアやウィンの忠告がどうにも気になっていた。
闇は嫌われている。町では特に。町では気をつけて――。
(すまないな。まだしばらく大人しくしていてくれ)
ダルクはコートの中に向かって小声でささやいた。
そのときだった。
おそらく『町では気をつけるべき』の意味が異なるだろうが、ダルクは自らの不注意を思い知ることになる。
心の準備も反撃準備もないまま、その超常現象は唐突に始まった。
「おっ、っと」
まずダルクの杖先が、偶然そこだけぽっかり空いていたレンガとレンガの隙間に挟まってしまった。
バランスを崩したダルクは前傾姿勢で大きくつんのめる。
そしてちょうどそこは曲がり角だった。
さらに人通りが見られなかったはずの街路に、恐るべきタイミングでその曲がり角を迂回した人物がいた。
「!?」
(危な――)
互いが気づいたときにはすでに接触する瞬間。
いきなりの至近距離。もうどうすることもできない。
ダルクはつんのめった勢いのまま、その人物の胸元へと顔を埋め込ませてしまった。
(危な――い、いやっ、これは――!!)
布越しながら、やわらかい。やわらかい! やわらかい!?
胸に顔をうずめてしまって、それがムニムニやわらかい。
――こ……これはまさか……。
「っ!」
感触を味わったのは一瞬だった。
時が再開されたかのように密着は解かれ、互いの体はすれ違うように交差する。
ダルクは不安定な身体を杖と足を使って持ち直し、そのやわらかい胸の持ち主は道脇へよろけた。
「す、すまないっ」
言いながらそのシルエットに目を向ける。
二枚のガラス。眼鏡。黒縁の眼鏡が、真っ先に目に飛びついた。
続いて理知的な顔つきと、落ち着いた茶色のショートカット。
そして。
体つきを見ると同時に、嫌な予感が的中していたことを知る。
太ももを露にした短いスパッツ。落ち着いた衣服にも関わらず、立体的に強調された豊胸。きょ、巨乳。
「あ……その……」
ダルクは打ちのめされた気分になる。もう何度こんな目に遭えばいいのだろう。
ぶつかった相手は、もれなく同い年くらいの女の子だった。
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