49:1[sage]
2010/06/10(木) 00:19:19.71 ID:WgrV/bQo
「ご、ごめん、もうその、帰る! い、色々ありがとう!!」
自分のコートと杖を引っつかみ、一直線に部屋の戸口まで駆け出す。
エリアの呼び止めるような声が聞こえた気がしたが、振り返る勇気なんて微塵もなかった。
ダルクは鬼気迫るがごとく玄関らしきドアを探し当て、そこからためらいなく夕闇の中へと飛び出した。
(やらかした――やらかしてしまった――)
なんであんな誤解の解きようがないことを。
最初から毛布だけ掛けておけばよかったのに。
走る。
ひたすら走る。
追われているかのように走る。
林道に入ると、天を覆う枝葉のせいで急に視界が薄暗くなった。
闇属性のダルクはかえって目が利き始める。
走りながらふと、視界の端に何か黒いものがチラついているのに気付く。
いつのまにか使い魔のディーがパタパタ付いてきていた。
と同時に、木の根に足を取られる。
「いっ」
絵に描いたようにスッ転び、ベシャリと落ち葉を吹き飛ばす。
幸い外傷は負わなかったが、足をしたたか打ち付けた。
痛い。心も身体も痛い。
「く、くそぉ……」
ディーが心配そうにダルクの肩に止まる。
痛むヒザをさすりながら、荒い呼吸で「大丈夫だ」とディーをなでてやった。
「……うぅ……」
ちっとも大丈夫なわけなかった。
心の中に、デタラメに重い巨岩がどっしり沈み込んだ気分だった。
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